プライマリ・ケア医の技術で一番大切なものは何であろうか? 30年間、海外を含め、プライマリ・ケアの現場で積んださまざまな経験からすると、それは患者さんとの対話術である。もちろん確かな医学知識に裏打ちされた対話術なのであるが、疾患の種類や老若男女を問わず、その時の患者さんの心理状態を察して、当意即妙に対話できる能力は、臓器専門医に無いとは言わないが、欠けていることが多く、プライマリ・ケア医に必要不可欠なものである。
この能力を高めるのに学ぶのが必要な分野は、医療面接(Medical Interview)である。この教科書は現在、かなり多くのものが書店に並んでいるので、ぜひどれか一冊を読破して欲しい。もう少し学問的に深めてみたくなったら、医療人類学の著書に当たるのがよい。医療人類学者で特に臨床医学に深く関わっているのが、アーサー・クラインマン(Arthur
Kleinman)であるが、理屈から入りたい人には最適である。
日常生活で、会話術を磨くことも、十分医療面接の訓練になりうる。人前での講演や、他人の講演の司会や座長、その講演後の情報交換会での会話など、医療業界の日常の中にも対話の練習機会はいくらでも転がっている。元プロ野球の有名選手が「ゼニはグランドに落ちている。」(練習すればするほど技術は上達し、年俸も上がるの意)と言ったが、これはプライマリ・ケア医にも当てはまる。
心エコーや腹部エコー、もう少し進んで内視鏡検査などの診断技術は、学んで損をすることは何もない。しかし、これらは、その道の専門医には、技術的に劣ってしまうことが多い。したがって、診療の場での必要性によって、これらの診断技術を学ぶのが一番効率的であろう。
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