医療行政最前線10/6号トップの言葉の軽さ

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2026-10-06

 部門トップの言葉は想像以上に重いのです。しかしこの重みを理解しないリーダーが存在します。まず役員など日ごろ合わない人は話す機会が少ない分その言葉が総てなのです。上の人になればなるほど出会う機会が少なくなります。

 特に大きな組織で有れば有るほどコミュニケーションの時間は少なくなります。そのわずかな時間に発する言葉で職員がどのように感じるかという事です。上の人ほど判ってくれるだろうという勝手な思い込みがあります。本来はその言葉の意味、背景、理由というものをきちんと説明しなければいけません。「判ってくれるだろう」は伝わらないのです。違う形で伝わってしまう事も多々あります。自分の発言の重さを自覚しなければいけません。コミュニケーションの時間が少なければ少ない程、そういった機会を活かさなければいけません。

 上司の言葉は明らかに必須で強制したように聞こえます。言葉の受け手は当然に強制だと感じています。それなのに言葉を発した上司は俺の言った意味は「強制ではない」と後で言い出す人がいます。こういうのが典型的な言葉の軽さになります。なぜならトップは責任を取る立場なのです。しかし「自分はそんな事は言った覚えはない」というのは責任逃れなのです。責任を部下に押し付けているという事です。こういう上司は意外に多いのではないでしょうか。ここまで書くときっと誰かの顔が浮かんで来るでしょう。政治の世界でも、大手の会社でも責任を部下に押し付けて「トカゲの尻尾切り」で幕引きなんて場面をテレビでもよく見かけます。

 日本語には曖昧な言葉も沢山あります。その言葉のチョイスが大切です。同じ意味でも受け取られ方が大きく変わります。「自衛隊の子供は貧しい人が行く」という発言がありました。その後、ネット社会で炎上した事は記憶に新しいと思います。翌日その団体のトップが記者会見で処分を発表し、謝罪文を出しました。

 この謝罪文の一文に「誤解をまねいた」という言葉を使いました。この「誤解」という2文字でネットは再び大炎上しました。「誤解を招いた」というのは勘違いさせた、と相手のミスのような表現になります。自分たちは間違っていないが、勘違いをさせてしまったという表現です。その結果、この人達は全く反省をしてないと世間は受け取りました。ネット社会では再び大炎上しました。お詫び文なのに火に油を注ぐという結果となりました。

 よくメールの返信で「了解」「任せて」「検討します」「大丈夫」「承知」「御意」「後ほど」「調整します」などと1行で返す人が多いかと思います。貰った方はそっけないと感じます。しかも曖昧表現です。何を了解したのか、何が大丈夫なのかやはり一言、二言、コミュニケーションが足りないという事です。

 言葉の重さというのは表現では無く関係性で変わります、上司から部下という無言の圧という物があります。この無言の圧が言葉の意味を変えてしまうのです。自分では何気なく発する言葉であっても、上下関係のある場合はその言葉の重さ、軽さが変わってしまいます。言霊って言葉があります。言霊とは発した言葉に不思議な力が宿っているという事です。ポジティブな言葉は前向きな方向に進みますが、ネガティブな言葉は組織全体の士気を下げます。

 知ったかぶりという言葉もあります。プライドの高い人は知ったかぶりをします。知らないと思われるのが恥ずかしいという心理です。知ったかぶりの言葉は相手に判ってしまいます。本などの受け売りで話すので中身がありません。とても言葉が軽く感じます。逆に実体験から基づく話しには説得力が有り重く感じられます。

 言葉に重みが有る人の言葉は情報量が多く、説得力が有り、影響力が有ります。中身が無く、薄っぺらな内容はこの人の言葉は軽いなと思われます。深く考えず、実体験が伴わない言葉は相手をイラつかせます。経験が少なく、自分を大きく見せようとする、背伸びをしているそんな人の言葉には説得力が乏しく言葉に重みがありません。

 さて、キリがないくらい事例が出て来そうなので、今回はこの辺りで終了致します。さて貴方はどんな上司を思い浮かべましたか?

 それでは本日のなぞかけは
「重い言葉」にしましょうね

「重い言葉」とかけまして
温泉とときます
その心は
力 湧きます(地から 湧きます)

次回もまた宜しくお願い致します。


【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている

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