医療介護の世界は保守派の人が多く、そのせいか上司も部下も変化については不快感を示す人々が多いです。リスクを必死に考え新しい事を推進する人物を嫌う傾向があります。
一方で医療は2年に1度診療報酬改定が行われます。介護については3年に1度、介護報酬改定が行われます。この数年に1度の改定により、望まなくても変化をせざるをならなくなります。この改定により病院、診療所、介護施設、その他は右往左往して変化していきますが。抵抗勢力の強い医療機関ではなかなかおいそれと内容の変更をしてくれません。この変化へのスピードが医療機関の勝ち負けとなっていきます。
勝ち組は改定以前に中医協などの会議資料を診ながら事前に予想して改定準備に備えています。改定と同時に病院の体制が変わります。多くのところは2月または3月頃診療報酬改定の内容をみながら3月、4月、5月と段階的に変化をさせます。保守派の変化を好まない集団のところでは改定あと他の病院などの成功事例をみながら1年後または2年後に変化させようとします。一見この成功事例をまねるという手法はリスクをとらず失敗が少ないようにも見えますが、診療報酬で何かに誘導を図っているときは如何に早く体制を整えるかでそれに掛かる先行投資の回収が早くなります。
特に補助金等により更なる誘導を行うケースでは1年後ではその補助金は無くなってしまいます。診療報酬そのものも2年後に代わってしまうケース、さらなる体制変更に誘導するケースなどもみられ、勝ち組、負け組の差が広がる事があります。それでも医療、介護の世界は他の業種と比較して変化は少ない方でしょう。IT業界の変化の速さにはついていけないというのもわかります。取り残されないよう必死でいますが、実際には諦めている事も多々あります。
動物は環境の変化によって長い時間をかけて進化してきました。進化できない動植物、昆虫は絶滅してしまいました。医療、介護の世界でも絶滅危惧種が増加しています。地球上に発生した生物は平均すると1年あたり全生物の1割が絶滅しているそうです。100万種あたり1割というのが絶滅の統計らしく。9割以上の生物が絶滅の道を歩んでいます。地球上の歴史において過去5回大量に絶滅した時期があるそうですが、実は現在は6回目と言われるスピードで生物は絶滅しているそうです。
9割以上(じつは99%という説もあります)が絶滅する中で人間は生き残ってきました。環境の変化に順応する事ができたからです。医療、介護は社会主義です。国が決めた点数の中で生きていきます。ある意味公平で日本中同じ条件で戦っています。その中での勝ち組、負け組が発生しています。変化に順応できない医療機関は絶滅してしいます。いち早く変化に順応する医療機関は生き残り、進化できない医療機関は絶滅していきます。2021年の医療機関の倒産は33件です。負債総額は94億300万円だそうです。参考までに記載しますが倒産件数は2018年40件、2019年45件、2020年27件、2021年33件です。
【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。