素行の悪い人、見た目が怖い人が良いことをすると好感度が上がるという事がありますがこれを対比効果と言うそうです。日ごろ怖い院長や看護部長からふと優しい事を言われるのはとても嬉しいものです。叱られるかと思いきや、優しくなだめられたりすると脳も緊張から緩和に変わります。
また完璧だと思っていた院長や看護部長、回りからも一目おかれる存在です。仕事もでき人望もあり完璧な存在の人が、ちょっとした失敗やミスをすると親近感が湧いてくるという効果もあるようです。人間ですからどんな人にもミスは起こります。逆に日ごろからミスが目立ち失敗を繰り返す人は評価も低く信用を無くしている人がいます。ミスによりどんどん評価が下がっていきます。こちらはギャップ(対比効果)とは無縁な方となります。
医療の世界では日ごろからミスが多い人物が何かトラブルを起こしたときは患者から訴訟をされる確率も高いようです。一方、信頼度抜群、人気のある医師は少しのミスがあっても訴訟という確率が低くなるようです。もっとも信頼度抜群な医師は日ごろからきちんと患者や家族にわかりやすく説明をして納得してもらっているが故に信頼度が高いのであって、日ごろの診察で患者や家族が納得していないからこそ信頼度が低いという事にもなります。
その理由ですが「嫌なことは忘れられない 嬉しかったことはすぐ忘れる」という人間の習性にあります。嫌なことは忘れないというのは本人にとって強烈な印象だからです。トラウマとして頭の中から離れないという事になるようです。
話は脱線いたしますが厳格な上司と逆に優しすぎる上司は舐められるという1面もあります。優しいだけの人は舐められ易いです。優しくしすぎる事で相手を調子に乗らさせてしまいます。甘やかす人というレッテルが付いてしまいます。また怒れないという事で信用を失うという事もあります。
野球のピッチャーも剛速球だけでは撃たれてしまいます。速球を生かす為には変化球も必要です。緩急をつける事で自分が思うように試合を支配していく事ができるのです。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。