医療行政最前線4/11号政府 マイナンバー保険証
マイナ保険証による確認を受けられない人には「資格確認書」を発行

株式会社日本医療企画

2023-04-11

 政府は3月7日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、マイナンバー法)の一部改正法案を閣議決定した。今回の改正案では、次の6つを改正のポイントとしている。

① マイナンバーカードの利用範囲の拡大
② マイナンバーの利用および情報連携にかかわる既定の見直し
③ マイナンバーカードと健康保険証の一体化
④ マイナンバーカードの普及・利用促進
⑤ 戸籍等の記載事項への「氏名の振り仮名」の追加
⑥ 公金受取口座の登録促進(行政機関等経由登録の特例制度の創設)

 ③に関しては、昨年の「骨太の方針2022」において、保険医療機関と薬局へのオンライン資格確認の導入を2023年4月から原則義務化するとともに、24年秋ごろを目途に現行の健康保険証を原則廃止。マイナンバーカードとの一体化を目指す旨が盛り込まれていた。そこで、改正案では健康保険証の廃止にともない、マイナンバーカードによるオンライン資格確認を受けることができない状況の人でも、必要な保険診療等を受けられるように、「資格確認書」を提供する方針を示している。

「資格確認書」の取り扱いは現行保険証と同様の想定

 この「資格確認書」の詳細については、2月17日にデジタル庁が開いた「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」で示された中間とりまとめに示されている。
 
 「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を受けることができない状況」の例には、▽マイナンバーカードの紛失・更新中の人、▽要介護の高齢者や子どもなどのマイナンバーカード未取得者、▽第三者が同行し本人の資格確認を補助する必要や、家族・介助者等が本人代理で薬剤の受け取り等に行く必要がある場合──などを挙げられている。

 それらの人へ、氏名・生年月日、被保険者等記号・番号、保険者情報等が記載された「資格確認書」(基本は紙)を発行し、被保険者資格を確認することを想定している。発行費用は現行の保険証と同様に無償とし、有効期間は1年を限度としている。
また、中間とりまとめには、「よりよい医療を受けることが可能になることや、診療報酬による患者負担に差があることなど、マイナンバーカード利用の意義・メリットをわかりやすく伝える」との文言も記載されている。

 これに対して加藤勝信厚生労働大臣は、2月24日の記者会見の際に、診療報酬上の「資格確認書」の取り扱いについて言及。今後の運用方針などを踏まえて検討するとしたうえで、「基本的には、現在の健康保険証の扱いと同様になるものと考えている」との見解を示した。22年10月に新設された「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」では、マイナ保険証を利用した場合、現行の健康保険証よりも患者負担が軽減される。これは、オンライン資格確認の利用により、医療機関側の情報確認にかかわる業務負担が軽減するという観点からの評価だ。

 したがって、「資格確認書」ではオンラインによる患者情報の確認ができないため、診療報酬上の取り扱いも、現行の健康保険証の扱いと同様になる認識だ。なお、この中間とりまとめを受けて2月24日の厚労省の社会保障審議会・医療保険部会では、「資格確認書」の申請に関して、本人による求めが難しい場合もあることを指摘。そこで、保険者が必要と認めるときには、本人からの申請がなくとも「資格確認書」を発行できる仕組みにする方針を示し、マイナンバー法の改正案にも反映するものとした。

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