医療行政最前線2/7物価上昇に追い付かない賃金

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2024-02-07

 大手企業がここ数年物価上昇に対応する賃上げが始まっています。中小企業の6割が賃上げを実施しています。が逆に言うと残り4割の企業は賃上げを出来すにいます。その代表的な業種が医療、介護の業種です。

 医療保険の診療報酬改定は2年に1度、介護保険の介護報酬改定は3年に1度です。賃金の源であるこの診療報酬及び介護報酬が上がらなければ賃金の上昇は見込めません。
 
 2024年は診療報酬及び介護報酬の同時改定です。2023年の中央社会保険医療協議会では各委員と財務省との戦いがありました。診療報酬及び介護報酬を下げたいと思っている財務省に対してこのままでは医療介護の業界は崩壊してしまうという各委員の鬩ぎあいは当初は財務省に押し切られそうな勢いでしたが、岸田政権発足当初から最大の課題とする賃金上昇という目標もあり結果は診療報酬本体プラス0.88%、薬価マイナス1.00%、介護報酬プラス1.59%、障害福祉サービスプラス1.12%という政治決着となりました。

 ここからは賃金診療報酬改定後にどこまで賃金に反映するかという事になります。当然支払い側も検証するでしょうし、賃金上昇分に使われるような報酬名目の作り方として加算など工夫がせれる事と思います。そして数か月後実際にどのようになったかが発表される事と思います。今回の改定は4月からではなく2か月遅れの6月の改定となります。当然ですがお給料等、定期昇給の4月は過ぎていますので、各法人の対応にも工夫が必要となります。

 医療機関においては医師、看護師、コメディカルまでは先に反映されるようですが事務員に関しては遅れた対応となるような指摘も出ています。医療機関では光熱費や給食、薬剤費、外注費なども軒並み値上がりがされています。一方コロナなどの補助金は終わっていますので人件費だけの問題ではありません。一般企業と違い各医療機関が勝手に診療代を値上げする事はできず医療、介護の世界は統制経済となっています。

 今回の報酬改定により、賃金が上がる事は間違いありませんが、物価上昇のスピードはそれ以上に早く今後も上がる事が見込まれていますが、医療改定はその後また2年有りません。介護においては3年です。その間の物価上昇にこの業界の賃金は耐えられるのでしょうか?職場の事務員からはこの物価上昇に対し現在の賃金では生活が継続できないと切実な訴えが来ます。

 医療事務の求人をしても現状の給料では応募が来ません。現在、医療、介護の現場で働いている職員たちも他業種の賃金の高い業界へ移っていく者もあります。岸田政権の言う物価上昇を上回る賃金上昇には程遠い現状があります。さらに少子化により労働人口が減少しています。医療介護の人材の不足は深刻な状況です。

 助っ人外国人材についても円安の状況において、日本で働きたいという人材が減少しています。今後しばらくはこの状況が改善される見込みは有りません。限界値がどこかで到来するのでしょう。国も問題点としては解かっているのでしょうがこの状況について医療介護の人たちがもっと声を上がて行かないといけないだろうと思い書いてみた次第です。



【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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