医療行政最前線3/5医療機関のモンスター職員を巡る人事と現場

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2024-03-05

 あえてモンスター職員と言っておきますが、①規律を守れない、②協調性が欠如している、③能力不足という職員に対してどのように対応するかという問題は定期的に発生します。命を預かる医療現場において①②③どれも大問題ではあります。ただし①及び②については注意、指導をする事はできます。何回か注意などして実績を積み重ねる事はできます。しかし③の能力不足、スキルが低いという職員に対しあなたはスキルが低いという注意は出来るでしょうか?免許社会の医療の現場で患者側が判断して医師を変える事はできますが、何度も患者に迷惑をかける実績を積まないと異動や出勤停止にできないという問題に何度か遭遇します。

 患者の家族から訴訟をされるリスク、老人ホームからの訪問診療などの契約を解除され数千万円単位の損害を出すなどの実績が必要なのでしょうか?医療スキルの低い人材が訪問診療や訪問看護において単独で訪問する事で医療ミスなどが起こる可能性が高いと判断を周りがしていくとその人には自然と患者がいかなくなります。普通の外来もそうですが人気のある医師と人気の無い医師と別れてしまうように患者は信頼できない医師の所へは行かなくなります。患者数というわかりやすいバロメーターがあります。訴訟などのリスクが伴わなければ通常の会社と同じ条件ですが、訴訟リスクを伴う人員に対しミスの実績を求めるそれをペーパー残しての行くという作業は通常の会社のモンスター職員よりもストレスがかかります。

 当然ですが現場の医師、看護師からは何とかして欲しいという依頼が来ます。一方で人事部は処分に対してはとても慎重であり、移動や退職勧告などによる、逆訴訟を恐れ何もしないという事が多い状況です。結果的には現場任せの放置というケースが多々あります。通常の会社であれば③のケースでは必要な能力を習得させるための取り組みを行い変化が見られるかの確認を行います。能力が向上しない場合やミスマッチと判断された場合には別の部署に異動させる事を検討するという事になりますが、医療の現場でこれを行う事は出来るのでしょうか?

 モンスター職員への対応は逆にパワハラと受け取られてしまうケースもあります。患者を渡さないというのも一種のパワハラと受け止める人もいます。例えば問題のある医師に無理やり患者を持たせる、専門知識の範囲が狭く専門外の患者を診させるという事に対しては患者にとって不利益であり、医師にとっては医療ミスを誘発する危険もあります。また近年はこういった医師は患者に対してドクターハラスメントを起こす事も有ります。

 そのまま放置すると他の職員にも医療法人にとっても大きな影響が出る事になります。また対応を誤ると訴訟に発展する事もあります。これといった解決方が無いのが現状ですが、焦らずじっくりと、なるべくリスクを伴わないようなタイミングと患者に迷惑が掛からないようバックアップの職員を確保しておくなどソフトランディングを心がけてください。


【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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