前回に引き続きこちらの施設基準について検証してみたいと思います。
こちらの施設基準によって新規開業または在宅医療への新規参入がだんだん厳しくなってきているイメージです。
開業当初の医師は施設在宅によってある程度経営効率を上げたいと思っている医師は多いのではと思います。
どうも減算40%のイメージが大きいようで施設への在宅をどうするのか思い悩んでいる医師が多いようです。
オンライン診療を行えば実際には10人以上施設の患者を350名~700名/月は診られる事になります。
逆にそこまでの間はなんの減算も有りませんので、新規参入に躊躇する必要も無いかと思います。
在宅医療へ新規参入の医療機関は施設患者350名ってなかなかのハードルで実際にはその人数に達成するまでは
結構な年月が必要です。これを悲観して在宅医療をやらないというのは随分飛躍した考えだなぁ~と思います。
10人以上施設の訪問診療数が3カ月で2100回を超えるまでに要介護度3以上の割合が5割以上、
施設と個宅の割合が3割以上、年間看取り数20人以上などの条件をクリアできる医療機関になれば問題は有りません。
それでは今回、新しく出来たこの施設基準で現在大慌ての医療機関はどんなところなのでしょうか?
施設しか訪問していない医療機関でかつ新規出店を頻繁に繰り返している医療機関になります。
新規出店を沢山している所であっても施設と個宅の割合が満たされている医療機関は減算にはならないでしょう。
前にも書きましたが外来の比率が5%未満の医療機関は自動的に在宅医療専門となり元々このルールがありました。
しかしこれまでの5%ルールの減算は20%だったものが今回の改定では40%減産と減算の割合がより大きくなりました。
これまでは外来患者数が5%居ればなんの減算も有りませんでしたので実際には減算されたという医療機関を
聞いた事が有りませんでした。今回の診療報酬改定では外来5%ではなく
10人以上施設への訪問診療数が3カ月で2100回以上の所が対象となりました。
ここにすでに達成している医療機関で居宅の割合が少ない所はかなり青ざめているかもしれません。
そのような医療機関は
① 月の訪問診療回数が700回以内になるように細かく分院を作る。
② 施設への訪問診療の契約を解除する。
③ 個宅の割合を多くする。
などと言う対策で回避しようと考える医療機関もあるかもしれませんが、
施行までの期間には間に合わない所があるかもしれません。
いずれにしましても3月31日以前に開設された医療機関であっても今後は、施設と個宅の割合、
要介護度3以上の割合、年間看取り数などを意識した在宅医療経営に舵を切らなければいけないのでしょうかね。
厚生労働省の狙いがどこにあるのかは分かりません。
考えられるものとしては
① 訪問診療の数を減らしてオンライン診療の数を増やしたい。
② 新規出店や在宅医療の新規参入に歯止めをかけたい。
③ 患者数の間引きをしたい。
④ 患者の単価を下げたい
などになるのでしょうか?
都会であれば在宅医療を行う医療機関は沢山ありますので施設との契約を解除したとしても、
他の医療機関担えば良いのかもしれませんが、地方では大手の在宅医療機関が縮小体制になると
そのエリアの在宅医師の必要数が足りなくなる所もあるかもしれません。
また地方の医療機関数の数が少ないエリアにおいては(イ)直近1年間に
5つ以上の保険医療機関から、
文書による紹介を受けて訪問診療を開始した実績があること。こちらの算定条件を満たせない所もあるかもしれませんね。
医師や患者からすればこのような小手先の経営に意味があるのかなぁと思います。
それぞれの医師と患者の関係が分断されなければ良いなぁと思うばかりです。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。