クリニックで事務長の仕事をしていると従業員同士の評価や評判が1日で180度変わるときが有ります。それまでの信頼や評価が一気に変わってしまう。この職場の空気により経営者の判断が難しくなる事がしばしばおこります。
この空気をうまく使って雰囲気を良くするのは管理者の腕の見せ所ではありますが、良い空気、悪い空気、空気の入れ替え、空気の流れる方向これが診療所の運営に大きく影響を与えます。しかし現場の中に居ると空気がよどんで来ても気づかない時があります。
一度、外の空気を吸って戻って来る、または元々外に居て中に入った瞬間にこの空気のよどみに気づく事ができます。この空気をコントロールする事は出来るのでしょうか?
さてそれでは具体的に職場における悪い空気とはどのようなものでしょうか?
・別に目標が達成できなくても関係ないよ
・どうせ自分の意見なんて聞いてくれないし
・長い時間職場に居さえすれば残業代も稼げるし
・みんな頑張ってないんだから、自分も頑張る必要なんかないよ
とこんな職場は空気がよどんでいます。そしてこの空気により職員全体のモチベーションは下がり、皆さがこの雰囲気に感染していきます。このような空気が支配している職場の特徴としては人のうわさ話で互いの悪口を陰でこそこそしているという特徴もあります。
人は周りの空気に多大に影響を受けます。こういう現象はミラーニューロンと言うそうです。人の脳は場の空気に影響を受けるメカニズムが存在するそうです。
2023年のワールドクラシックベースボール(WBC)で大谷翔平選手が連日の大活躍を見せ見事に日本が優勝しました。たった一人の大活躍によりチームの空気が変わり、それどころか日本の国全体の空気は明るくなりました。
大谷選手の一言で勝つのが当たり前、気後れしない、そんな空気につつまれ奇跡のような場面が連発しました。特に日本人は「空気を読む」というのがお家芸です。周りと同じ行動をしないといけないという同調圧力が存在します。世界中で最も感化されやすい人種です。逆に村八分という言葉も昔から存在し同調しない人に対し疎外感を出す人種でもあります。
確か前に何かで読んだ記憶がありますが、いま正に沈没しようとしている船の船長が乗客に対し「海に飛び込んでください」と言ったそうです。その時にドイツ人には「規則ですから飛び込んでください。イタリア人には「今、飛び込むと女性にモテますよ」日本人には「みんな飛び込でますよ」と言ったそうです。なるほど国民性が有りますね。
という事で話は戻りますが。良い空気とはポジティブに頑張るのは当たり前という雰囲気がある職場で悪い空気とはネガティブに頑張るのがかっこ悪いといった雰囲気がある職場という事になります。2:6:2という法則がありますがそれぞれ優秀な人、普通の人、残念な人の割合となりますが、この中でマジョリティーの高い所は普通の人の60%となります。この60%の人は最も影響を受けやすい人たちです。優秀な人に引っ張られれば良い空気になりますが、残念な人に感染してしまえば悪い空気になります。この優秀な人と残念な人のどちらのパワーが強いかで普通の人はどちらかの空気で支配されてしまいます。
そして事務長はこの空気を上手にコントロールしなければいけないのです。コントロールを失敗するパターンとは事務長が空気を変える為に優秀な人材を使って職場の雰囲気を変えようとする事です。普通の人たちは事務長が優秀な人材に「えこひいき」をしていると判断されてしまいますと職場の空気は悪い空気に変わります。
また残念な人に対して圧力をかけますと、残念な人は残念な人なので普通の人を巻き込んで反乱するようになります。
事務長が職場の空気を変えたいのであればこの普通の人に対して指示してもらう事が大事な事となります。
この普通の人とは選挙で言うならば無党派層になります。選挙と同じで無党派層の心を掴んだところに空気が流れるようになります。
お笑い芸人と同じでつかみが大切という事なのでしょうね。
【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。