今から24年前、保健所の保健師さん(当時は保健婦さん)から、クリニックにクレームの電話がありました。僕にとっては、在宅医療に関わって最初のクレームです。
保健師:「先生は先週は午後に診察に来たのに、今週は午前中に診察に来ました。」
「同じくらいの時間に来られないのですか?」
という苦情が来たので、それを医師に伝えたところ
医師:「なんで?患者さんは自宅で寝ながら待ってるんだから、何時(いつ)行っても大丈夫だよ」
患者さんは医師に決まった時間に来て貰いたいのです。
在宅医療とは、こんな事で医師を評価されてしまいます。
寝たきりなんだから何時行っても大丈夫、そんな風に思っていますと、すぐに地域からソッポを向かれます。
せっかくちゃんと医療を提供しても、評価は低くなってしまいます。
自分自身(医師本人)もそうでしょう。
自分が待つ立場であれば、きっとイライラするはずです。
例えば、宅配便が何時にくるか分からず、家でずっと待っていたらイライラしているはずです。せめて午前中なのか午後なのか教えて欲しいと思うはず。待っている人はいつ来るか解らない、ってそれだけでストレスになります。
患者さんは、医師にはそんな事は言えない人が多いです。
こういうクレームは、ケアマネージャーや訪問看護師、保健師などを通じて診療所に来ます。
このクレームを「教えてくれてありがとう。」と言える医師は、在宅医療に向いています。「こっちは忙しいんだ」と、怒ってしまう医師は在宅医療には向いていません。
とはいえ、緊急往診の依頼が入り、決まった時間に行けない場合もあります。
来るはずの先生が一向に来ないと、患者さんは先生を心配します。
「来るはずの先生が来ない。」「途中で何かが起きたのではないか。」心配してクリニックに電話がかかってきます。
先生の頭の中は緊急患者さんの事で頭が一杯です。
こんな時はクリニックから「遅れてしまいます。」と一報してあげた方が親切です。
「緊急の往診で遅れてしまいます。」とお話しすれば、患者さんはちゃんと理解してくれます。
自分が急患になった時にも来てくれると思うからです。
「遅れてしまう」という事を連絡する、この1つで地域からの評価はアップします。
こういうクレームが在宅医療のノウハウとなってくるのですね。
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。