寝たきり高齢者の方がヘルパーさんと結婚したらしい。
怒り心頭の家族です。
配偶者になると遺言がなければ財産の半分をその人が相続します。
家族はどうやら、この結婚が無効だという裁判を起こしたようです。
これが在宅医療の我々クリニックにどう関係するかという事になりますが、大いに関係するのです。
ある日、裁判所からお手紙が届きました。
家族は「お父さんは認知症だから意思判断能力が無かった」という事を医師に証明して欲しいというのです。
意志判断能力が無いから婚姻関係は無効だ、という事だそうです。
その方が婚姻届けを出した時に認知症が有ったか無かったか、意思判断能力が有ったか 無かったか。
今、現在であれば、検査をすれば良いですが、過去のその時点がどうだったか科学的に証明する事ができません。
カルテを見ても内科系の内容しか書いてありません。
このお年寄りからすれば、ずっと放置され、家族はちっとも家に来ないで、
ヘルパーさんは毎日来てお世話してくれるのですから、本当にヘルパーさんへの感謝の想いが有ったのかもしれません。
成年後見人制度では逆の事がありました。
2人の娘と2人の息子
その内1名の息子はずっと昔に家を飛び出しほぼ音信不通のような状態だったのですが、
このお年寄りが老人ホームに入った時、成年後見人となってしまいました。
他の子どもたちは成年後見人の無効を求めて裁判をしました。
今度はご本人が意思判断能力があって成年後見人が必要が無いという事らしく、
意思判断能力が有るという事を証明して欲しいという事です。
医師はカルテを見て客観的に事実だけを話します。
どちらかに肩入れするような診断はしません。
介護のキーパーソンとしては長女さんが一番ふさわしいのですが、
子供たちの財産に関するトラブルですから、こちらサイドとしては口を挟む事は有りません。
それぞれ子供たちには目論見のようなものがあり、医師にこうして欲しいというような要望がきます。
特にどちらかに肩入れする訳でなく、事実だけを診断書に書いて後は裁判所の判断となります。
結果はどちらかに軍配があがります。
そして裁判で負けてしまった方から医療機関は恨まれます。
老人の財産に関するトラブルは後を絶ちませんね。他にも養子縁組という制度もトラブルになっている事があります。
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。