在宅医療最前線2/27号アリバイ工作的な夜間の電話

中村哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2019-02-27

老人ホームから夜間の電話というのは、割と頻繁に電話がかかってきます。
36.9度くらいのちょっとした熱でも電話がかかります。

老人ホームのスタッフは、後で患者家族からクレームを言われないようにアリバイ工作的に医療機関に電話をしてきます。

電話をしないと何かあった時に責任問題とされます。
その為、医師に電話をしたという実績を作ります。

ある意味、今のご時世ですから理解できます。

しかし、医師は36.9度くらいの微熱で「どうして電話をかけてくるの?」と思う訳です。
まして「往診依頼」という事が理解できません。

普通の人が36.9度の微熱でしたら、受診もせず自宅で寝ていると思います。
おそらく電話をしてきた老人ホームのスタッフ自身も、36.9度では医療機関への受診をしないはずです。
クレームを言うご家族も、これが老人ホームでなく自宅でしたら、クリニックには電話をせず翌朝連れて行くはずです。もしくは翌朝には平熱36.7度に戻っているかもしれません。

老人ホームのスタッフがクリニックへ電話をすることは、
「何故、受診させなかったのか?」とクレームを言うご家族がいるから仕方がない事かもしれません。

そして、医師が往診の必要が無いと判断して、老人ホームへ夜間往診に行かなかったという事に対して、翌日、施設長からクレームの電話がかかってきます。
当直のスタッフから「施設長、夕べ○○クリニックへ往診の依頼をしたのに○○先生は来てくれませんでした。」という報告がされる事があります。
そんなクレームを老人ホームから受けたことを経験した医師は、たいした事でなくても往診に行くようになってしまいます。

些細な事でも往診に来てくれるというのは、もしかしたらクリニックの差別化なのかもしれません。患者さんや、老人ホームからは感謝をされます。
しかし、高騰する社会保障費として考えるといかがでしょうか?
本来、往診の必要が無い患者さんへの往診は税金の無駄遣いです。

監査を行う国保、社保、支払基金、市区町村は、クリニックのレセプトを見て、この往診は必要ですか?と返戻の対象としてきます。

最近は、往診の必要性もちゃんと記入しないといけません。
返戻をされると、クリニックの収入は下がります。一方、収入が下がっても医師への人件費はかかります。

患者さんや、老人ホームのスタッフ気持ちは医師に往診に来て欲しい。
医師は出来れば深夜の往診は行きたくないし、行く必要も無さそう。
国や市区町村は余計なお金はかけたくない。

じゃんけんみたいなもので、それぞれ グー チョキ パーなのです。

上手に折り合いをつけて、連携をしていきましょう。


中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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