クレームには正当なクレームと不当なものがあります。
正当なクレームはクレームといいます。
不当な要求や恫喝などを行う人の事をクレーマーと呼びます。
本来クレームとは、単に要求の正当性を主張することです。自身の被った損害を説明して、その損害に対して責任のある相手に、損害の補償を要求する事です。
しかし、クレーマーと呼ばれる人種の方々は、ストレス解消のために趣味として恒常的にクレームをする人も存在しています。
企業にはコンプライアンス遵守という風潮もあり、これに便乗して、常習的に行う好訴訟的な常習的クレーマーという方もいます。
一部企業では、そのような顧客に対する専門対策班を設けている所もあります。
企業の対策班では法的な妥当性も含めて、対処をしています。
常軌を逸したクレームは、威力業務妨害罪や脅迫罪に問われる可能性もあります。
医療におけるクレーマーも同様ですが、医師や看護師、薬剤師、ケアスタッフ等に対して法律の枠を超える要求をする患者家族を「クレーマー」といいます。
医療の現場では当然ですが、各職種は法律を遵守しなければなりません。
医師法、医療法、薬事法、介護保険法、その他の様々な法律の中で仕事をしています。
クレーマーは、各スタッフの言葉尻を取って、自分の要求を通そうとします。
医療に限らず各企業に対して過剰に被害者を演じて、時には恫喝と思えるような行為に及ぶ者に対して用いてきた言葉がクレーマーでした。
在宅医療の現場においても、こうしたクレーマーという人たちは存在します。
医師をはじめ各スタッフの方は、クレームなのかクレーマーなのかを判断しなければなりません。
さて、私はクレーマーと判断するキーワードとして、
患者さんの家族が「誠意を見せてほしい」というセリフを言った時点で、クレーマーと認定するようにしています。
「誠意を見せてほしい」という言葉は本来、一般人が使う言葉ではありません。患者さんが使う「誠意」とは「お金」という意味です。
正直にお金が欲しいというと、「恐喝」になってしまいます。
明らかな恐喝をすると恐喝罪で警察に逮捕されてしまうので、遠回しな表現で話してきます。
さて、もう一つ
「誠意をみせろ」と同義語があります。
「誠意をみせろ」=「オレの言いたいことは解るよな!」
クレーマーのパターンはいくつもあるようですが、まずは理不尽な「言いがかり」をつけてきます。
そして医師や看護師、その他医療機関のスタッフの説明に聞く耳を持たない。
そして最後に高額な賠償請求を要求してきます。
クレーマーの方は理不尽な「言いがかり」を理不尽な「言いがかり」とは思っていません。
自分は正しい。誰に恥じる事ない正当な主張だと思っています。
医療機関や医師の説明を聞かないというのは、自分が絶対正しいという主張に対して、反論などが有る訳がないと思っています。
クレーマーの高額な賠償請求は正義の代償であり、当然の要求だと思っています。
クレーマーには大きく分けると2つのタイプがありました。
1つは頭の良い理路整然タイプです。
もう1つは感情激高タイプです。
このタイプによって対応方法を間違えると、余計に深みにはまってしまいます。
1つ目の理路整然タイプは、相手の要求に対してメモをとるなどお互い心理戦のようになります。
感情激高タイプに対して、目の前でメモを取るという行為は逆効果になります。
メモを取り始めた時点で威圧行為と判断するようで、クレーマーの怒りは一気に沸点に達してしまいます。
在宅医療では医師が訪問している為、クレームの第一報はクリニックの事務員さんが受ける事が多いです。
医師と患者さんや家族が自宅でとどんな会話が有ったか全く分かりません。
何も解らない中でむやみに「すみません」と謝ってしまうと、クレーマーにとっては好都合という事になります。
「早速調べまして、お返事申し上げます」。
「上司と相談いたしましてお電話いたします」。
「わたくしの一存では判断いたしかねます」。
など、その場で繕わずに一度電話を切るという事が大事です。
クレーム電話に対して言ってはいけない言葉があります。
「でも」、「ですが」、「だって」、「どうせ」
これはクレーマーに対しては絶対に使ってはいけない言葉だそうですので、気を付けて下さい。
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。