前回、私が小児科時代に出会った家族療法について触れました。その基本的な考え方は、「システムズ・アプローチ」です。誰でも他者との関わりの中で生きているわけで、そうした関係性のまとまりをシステムとしてとらえて、発生している問題に対応していこうという考え方です。在宅医療の現場でも有効で、常に私が意識している考え方のひとつです。今日はそのことをお話したいと思います。
当院の患者さんは認知症の方が多いのですが、「優しかった父が暴力をふるうようになった」「夜中に電話をかけてくる」「近隣の方とトラブルを起こす」など、家族では抱えきれないほどに問題が大きくなり、家庭崩壊寸前で相談にくることがあります。ものとられ妄想によっていちばん熱心に面倒をみている嫁を「財布を盗んだ」犯人にしたりもするわけですから、思わぬ嫁姑問題が隠れているなんてこともしばしばです。おばあちゃんが問題行動をする、家族のストレスが上がる、それを感じたおばあちゃんの症状がさらに悪化するという悪循環を断ち切らなければなりません。
私たちが訪問診療を開始して劇的に症状が改善する例があります。もちろん薬による効果もありますが、多くは関係性の改善がもたらす変化であると感じます。頼る先ができて少し緊張が緩むことも影響しているのかもしれません。まったく同じものでも少し角度を変えてみることで、関係性を健全なものにしたり、ポジティブなものにしたりという心理的な枠組みをコントロールする、いわゆるリフレーミングですね。家庭の中のどこにそのスイッチがあるのかをいつも探りながら診療をしています。
患者さんの居住空間で行う在宅医療には、そのスイッチに関係する情報があふれています。お生まれはどちら?学生時代は?いつ東京に来たの?お仕事は?なんて会話をしながら、家の中の状況、家族との会話の雰囲気を感じ取っていきます。1回の診療で収集しきれなくても、また次回。患者さん、ご家族とは長いお付き合いです。そこに時間をかけてじっくり気長に取り組むことができる。それも在宅医療の魅力のひとつだと感じています。
次回は、私が行うポリファーマシー対策について紹介したいと思います。こういった環境調整を組み合わせて薬を減らせることもあります。キーワードは「ケアと薬の最適化」です。
ではまた。

【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。
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