在宅医療最前線7/24号リーダーになんかなりたくない

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2019-07-24

医療の世界でも、もれなくリーダーシップ研修などのセミナーは盛んです。
医療機関でもお金と時間をかけています。
はたして、この研修によってリーダーは育っているのでしょうか?

もう20年も前の事です。
若手にやる気満々の職員かいました。彼の年齢は20台後半です。仕事も出来るし、アイデア満載でクリニックの新規事業を引っ張っていました。
あるとき、そのやる気満々職員に「主任にならないか?」と言ったら、
「お断りします」
と言われました。こちらとしては仕事の評価としてお給料を上げてあげたい、という思いで昇格を持ち出したのです。
当の本人は、
「仕事はこれまで通り一生懸命やります」
「お給料は今のままで良いです。」
「主任は困ります」
と言うのです。今時の若いのは欲がないのかなぁ、とか、最近の男は草食系なんだなぁ、と思っていました。

リーダー職になってしまうと、仲間たちと距離を置くのが嫌なのだそうです。

うまくいっていない診療所、病院、介護施設などはやる気が無く、不平不満のカタマリで職員は早く辞めたいと思っていたり、上司を追い出したいなどと思っているところがあります。

実は、リーダーはみんなのターゲットになりやすいのです。
医療、介護の職場ではリーダーというポジションは憧れの的とはならないようです。

医療、介護の人材ビジネスは大盛況です。
医療機関や介護事業の経営者はリーダーが育って欲しいと思っていますし、良いリーダーを探しています。理事長の要求するリーダー像は、ハードルがとても高いものを要求します。その為、リーダーになるとクビになってしまうケースもあります。
歴代の事務長や看護師長が次々と変わっていく病院などもよくみます。
もしかすると、クビになったリーダーほどリーダーの資質がある人だったりする事もあります。どういう意味かといいますと、良いリーダーはその法人が良くなるように考え行動しますが、理事長や院長へのゴマすりが下手なのです。どちらかと言うと理事長や院長に意見をしたりします。
残念ながら日本には「出る杭は打たれる」といことわざがあります。理事長、院長はレベルの高いリーダーを求めているはずなのに、自分に意見する人材を排除してしまいます。
結局 残るのはイエスマンだけになっていきます。

リーダーに限らず、職員などもなるべく意見を言わないという風潮もあります。
例えば会議の席で、新規事業について素晴らしいアイデアを出した職員がいます。そうすると理事長は「よし、それをやろう。君が責任者となってやってくれ」、という流れになります。
その方が新規事業を成功したとしても、お給料などで報われることはありません。
「良くやった」と褒められるだけ。
褒めてくれればまだ良い方です。酷い上司なら手柄を自分のものにしてしまいます。まして失敗したら責任を取らされます。
こんな事を過去に見てきた職員は、会議の席で意見は言いません。黙って座って会議の時間が過ぎるのをひたすら待っているだけです。

元々リーダーになりたいと思っていない人へリーダー研修を受けさせている、という実態も有ります。
経営陣はこの人にリーダーになって欲しいと思っていますが、本人はいつこの職場を辞めようかなど考えている人材だったりします。
ギャップたるや天と地ほども違います。


【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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