在宅医療最前線【在宅たかせ塾】熱中症がもたらす在宅医療へのダメージ

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2019-08-21

暑い日が続きますね。在宅医療を行う私たちにとっては受難の季節です。
前回、ケアと薬の最適化のお話をするとお伝えしましたが、季節柄、熱中症対策のお話に変更し、「ケアと薬の最適化その2」は次回のテーマとします。

消防庁からの発表によると、8月に入ってから熱中症による救急搬送の数が一万人を超えています。そのうち約半数が高齢者、昨年度のデータですが、約40%は住居で発生しています。熱中症といえば、日中炎天下でスポーツをしていた小学生がかかるというイメージは今や昔。私たち自身も含めて全世代が注意すべき問題です。

高齢者が暑さを感じにくいというのはよく聞かれることですが、訪問に行ってエアコンも入れずに40℃近くにもなろうかという部屋の中で厚着してたたずんでいる状況にでくわすこともしばしば。本人何食わぬ顔。こちらは汗だくになりながら慌てて服を脱がせてエアコンを入れ、水を飲ませてほっと胸をなで下ろすのですが、同じことを繰り返す可能性は高く、緊急でケア体制の見直しをせざるを得ない場面でもあります。

私が在宅医療を始めた当時、日中独居でベッドの脇には水が置いてあり、水分を摂っているにも関わらず、脱水症状を起こして救急搬送しなければならないケースがたびたびありました。特に脱水の状態でお茶や水などの電解質があまり含まれない飲み物を大量に飲むことによって起こるいわゆる「低張性脱水(低ナトリウム血症を伴う脱水)」は口渇感がなく、「屋内」「水分を摂っている」という条件下で起こしている意識障害をまさか脱水とは気づかないケースもあります。
これらの脱水を何度も繰り返し、入院してはせん妄を起こしてしまう患者さんの多さになんとかならないものかと、以来、経口補水液をみなさんの家にストックいただき、意識的に摂取することを年中通して指導したところ搬送の件数は劇的に減少しました。脱水、特に低張性脱水はせん妄のリスクにもなります。こうしたリスクマネジメントも在宅での療養を継続するためには必要なことと考えています。

在宅を回る私たちの体調管理も大切です。おいしいものを食べ、よく寝る、を基本にこの夏を元気に楽しく乗り切りたいですね。

■参考
STOP熱中症 教えて!かくれ脱水委員会
https://www.kakuredassui.jp/



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

たかせクリニックHPはこちら

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