在宅医療最前線11/20号【在宅たかせ塾】生活支援に重要な排便コントロール

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2019-11-20

 過ごしやすい季節になりましたね。ここ大田区では先日の台風19号で浸水被害がありました。近隣の施設や患者さん宅、連携している病院でも浸水被害があり、緊急ショートステイや転院、急遽施設入所の手続きなど対応に追われる事態となりました。災害では思わぬことが発生すると改めて認識。被災されたみなさんが一日も早く心穏やかな生活に戻ることを願わずにはいられません。

 さて、今回は在宅や施設での生活支援に不可欠な排便コントロールについてお話したいと思います。排便は生きていくうえで欠かせない営みの一つですが、うまくいかないとご本人及び介護する方に大きな負担となるだけでなく、外出や社会参加が制限されるなどの生活の質(QOL)に著しく影響を与えます。排泄のコントロールがうまくいかないことが在宅ケア継続のハードルになることさえありますので、在宅医にとっては重要な仕事のひとつです。

 当院の患者さんも多くの方が便秘の訴えがあり緩下剤を服用しています。高齢になり、もともと腸の動きや筋力が低下していることに加えて、食べる量も運動量も少ない方がほとんど。寝たきりの方となるとさらに深刻です。便秘は腹痛や食欲低下などの身体的な症状に加えて、認知症の行動・心理症状やせん妄を引き起こす因子にもなります。慌てたり、予定外に医師が来たり、場合によっては病院に搬送したりというのは、家族にとっても、本人にとっても負担のあること。できるかぎり穏やかにすごさせてあげたいですね。

 最近は便秘薬もとてもいいものが出てきました。かつては浸透圧下剤である酸化マグネシウムがよく使われていました。安くてそこそこの効き目はあるのですが、高マグネシウム血症のリスクがあるため、血液検査でのモニタリングがかかせません。また、刺激性下剤であるセンノシドなどは耐性ができやすいため、私はあまり使いません。最近では、新しい機序のアミティーザが使いやすいなと感じています。その他グーフィスやリンゼスといった薬は、腹痛も少なくとてもよい薬なのですが、食前に飲まなければならないのがつらいところ。できれば飲むタイミングは少ない方が介護する方に親切ですね。

 万人に効く薬はなく、効く効かない、副作用が出る出ないは個人やその方の状態によってかなり差があります。その意味で選択肢が増えたことはありがたいことです。一発で決めようとせず、その方に合った薬を患者さんやご家族と対話しながら細かく調整し見つけていくプロセス自体も重要な時間といえるでしょう。



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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