在宅医療最前線12/25号100の出来ない理由

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2019-12-25

医療 介護の世界は、とかく変わることが嫌いな人が多いです。
いわゆる保守派 「慣れ親しんだものを好む」「試みられたことのないものよりは試みられたものを」「過去の実績主義」のようなことでしょうか。本来は保守派の人は、医療・介護の世界に一番合った性格だと思います。

医療の世界では、2年に1度診療報酬改定があります。そして介護の世界は、3年に一度介護報酬改定があります。
厚生労働省は少子高齢社会の現在、急速に労働人口が減少して財源が不足し、且つ老人人口が増加することから医療費が高騰しています。
2015年の医療費の総額はついに40兆円を超え、社会保障費全体では96.3兆円になっています。また税収は54.5兆円で社会保障費だけで税収を大幅に上回っています。しかも2030年には社会保障費は149兆円になると言われています。こんな状況により国は急ピッチで医療、介護の改革を進めています。そして、改革は待ったなしの状況です。

しかし、医療の人種は変化を好まない人種です。診療報酬改定に伴い各医療機関では急速に業務内容を見直し、人員配置の変更を行います。これまで慣れ親しんだルールを大幅に変えざるを得ない状況になります。
診療報酬改定や介護報酬改定の年は保険点数の変更内容を読み込み、わずか1か月ほどで患者さんや、利用者さん、業者、その他との契約を再締結したり、案内を作成したり、説明をして同意書のサインをもらい、各システムの変更にも対応しなければなりません。絶対にしなければいけないのですが、会議では医師、看護師、事務員、その他もろもろ反対意見がゾロゾロでてきます。ありがたい事に本当に沢山の出来ない理由が並びます。 

「ありがたいことに」と書いたのは、確かに変化に伴い色々とリスクが伴うのです。
できない理由を聞くと「なるほど」と思ってしまします。赤字にならないように踏ん張って行く企業努力が必要ですが、ここでリスクを考えなければ後でしっぺ返しが待っています。他の医療機関も、きっと同様にスタッフからの反対意見が出ます。そのままの状況でガマンして売り上げが落ちているところもあります。

出来ない理由が100出たら、それに対する100の対策を考えることがビジネスチャンスなのです。

診療報酬改定にはこれまでの点数が下がるというものと、新設点数があります。この新設点数について「チャレンジしよう」と会議等で提案すると、スタッフが一斉に反対します。今までやったことが無い事に対して、「漠然とした不安」、「仕事が増える」、「患者負担が上がる」など理由は様々です。その為に出来ない理由が山ほど並びます。
国はある方向を示すとき診療報酬の点数で誘導をかけます。医療機関全体がそちらの方向に向くように、何年もかけて点数や規制緩和によって誘導します。初めに誘導されてしまった方が、絶対に儲かります。

新しいことを好まない業界において、初めに取り組み、システムとノウハウを作った医療機関は、間違いなく勝ち組になります。点数改定から2番煎じ、3番煎じで始めたところはまだ生き残れます。新設点数が出てから数年経ち、色々な医療機関が取り組みはじめ、「もう、そろそろ当院でもやらないとまずいよ」という頃に始める医療機関は、始めたものの翌年の改定で、その点数が下がってしまったり、市場に患者がいなかったりします。こういう医療機関は何のうま味も取らないまま最後に参入して、儲からない 儲からないと念仏を唱えます。

初めにチャレンジした医療機関は過去の実績がないのですから、ノウハウもシステムも何もなく自分たちで作っていかなければなりませんので、リスクも伴います。それだけにうま味は大きく、利益を出すことが可能です。
また、資金に余裕が出来るのでスムーズなリストラをしたり、新しいシステムを構築する事が出来ます。また自分たちが作ったプランニングが市場のルールになっていきます。最後の最後に参入する医療機関は、診療報酬も下がり余裕のないリストラになります。
いずれにしても今後の医療・介護業界は、常にリストラが必要になってきます。社会保障費は上がり税収が下がっているのですから、老人人口が増えれば増えるほど薄利多売、効率化という事になります。薄利多売とは、短時間で沢山の患者さんを診るという状況に変わっていきます。

そういえば、役所の役人さんこそが最も実績主義であると思うのですが、国の役人が新しいルールを作って、変化を好まない医療・介護業界の人々が新たな試みにチャレンジして、最も変化を好まない実績主義の市区町村が監査を行う。なんか面白いですね~

100の出来ない理由はノウハウを作る絶好のチャンスです。出来ない事を出来ないと思わず、出来ない事の理由に対し1つずつ解決する事が医療、介護業界における生き残り策となります。
また、100の出来ない理由には大きなビジネスチャンスがあります。



【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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