在宅医療最前線1/22号【在宅たかせ塾】認知症×糖尿病の難しさ

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2020-01-22

 お正月もすぎ、いつも通りの毎日がやってきました。みなさんはどのような年末年始を過ごされたでしょうか。
 「事件が起こるのは盆暮れ正月」という法則通り、この年末年始もバタバタと過ごしました。支援体制が手薄になり、いつもなら軽く対応できる問題も事件になるという面もあるでしょう。病気もトラブルも場所を選んではくれませんから、セーフティネットをどのように構築するか、過剰すぎず過少すぎず、なかなか難しい問題ですね。

 当院の患者さんは多くが認知症というのは以前にもお伝えした通りです。かつ糖尿病を持つ方がしばしばいるのですが、コントロールに難渋することが多く、もうひと工夫が必要です。

 もともと2型糖尿病の既往がある85歳の認知症の独居の方がいます。週に何回か、息子さんや娘さんが自宅を訪れて面倒をみています。通院が難しくなり、当院で訪問診療を開始して1年が経過しました。この秋、定期的な採血で、かなりの高血糖状態であることがわかり、精査とコントロールのために近くの病院に入院。2か月間が経過してやっと家に帰ってきました。

 退院してすぐに顔を見に行きました。思ったより元気そうです。病院でリハビリをしっかりやってくれたとのことで、ADLの低下もほとんどなく、私たちの訪問をにこにこしながら迎えてくれました。糖尿病に関しては病院できっちりコントロールされ、入院前に10%あったHbA1cが6.4%まで低下し、週1回のGLP-1製剤の注射と内服薬が処方されています。少し内服薬が多いかなと思ったものの、一旦様子を見ることにしました。

 そしてその1週間後、定期診療のために訪問しました。見るからに元気なく、顔は真っ青。明らかな低血糖状態です。当然のことながら、自宅で食事の管理ができるはずもなく、入院中と同じ血糖降下薬では量が多すぎたようです。
 友人の糖尿病専門医に相談し、作用時間が最も長い持効型のインスリン製剤を2日に1回打つことで、内服薬を減らす作戦を立てることにしました。訪問看護師に毎日訪問をしてもらい、簡易血糖測定の実施とインスリン製剤の注射のフォローを依頼、小まめに報告をもらいながら、現在最適解を模索中です。

 自分の体調の変化を認識、表現できない認知症の方にどのような治療の組み立てが適切なのか。

 「なによりも低血糖を起こさないことが大切。HbA1cは年齢÷10程度で十分!」という友人医師からのメッセージを指針に、療養空間を安定させていくチャレンジです。
 いつかはインスリン注射もやめられたらな・・・と願いつつ。



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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