在宅医療最前線2/26号【在宅たかせ塾】8050問題と在宅医療

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2020-02-26

 新型コロナウイルス感染症の問題は、これまで経験がないほどに大きくなり、21日には日本感染症学会と日本環境感染学会が連名にて「感染対策のフェーズを水際対策期から感染蔓延期へ移行すべき」との声明を発表しました。当院の患者さんはほとんどが後期高齢者。連日の報道に強い不安を訴える患者さん、ご家族は増え、さまざまな行動が制限される結果となっています。一刻も早い終息を願うばかりです。

 さて本題です。昨今話題となっている「8050問題」。「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支える状態を指します。
 訪問診療を開始し、80代の方のご自宅に伺うと、ひょっこりひきこもりの息子が出てきた、もしくは決して出てはこないけれど実は奥の部屋に50代の息子が家にいるらしい、なんてことはよくあること。親子で衰弱死していた、親が亡くなったのに年金がもらえなくなることを懸念して自宅に遺体を隠していたといった報道は衝撃を受けますが、実は予備軍は私たちの近くに多くいるのではと推察しています。訪問診療によってそんな家族の社会的孤立からの脱却への道筋をつけたいと考えてさまざまな機関との連携をしています。

 当院の患者さんのお話。母親と息子の2人暮らし。ケアマネジャーからの紹介にて母親の訪問診療を開始しました。
 母親は認知機能が低下しており、日常生活を自力で行うことは難しく、デイサービスやヘルパー等の介護サービスを使って暮らしていましたが、なぜか息子がすべて断ってしまったとのこと。
 訪問したところ、生活に支障をきたすような大きな疾患はないものの、皮膚に潰瘍があり、増悪による重症感染症の合併が懸念されました。家の中はゴミ(大切な書類?)が散乱、相当のニオイもあります。浴室は入れる状態ではなく、もしかしてこの息子さんもお風呂には入れていないのでは・・・。息子にお母さんにはケアが必要なことを説明、早急に訪問看護を導入しました。

 介護サービスを断った背景には、母親のお金が減り、自分の生活費が減ることを心配したということのようです。それでも母親は息子が可愛くて仕方がない様子。息子さんのためにも適切に財産管理ができるよう、今後成年後見制度の活用等を含めて検討するようお話しました。息子さんと遠方に住む娘さんに、こういう案件に詳しい司法書士を紹介し、進めていただくことにしました。必要があれば息子に対する保健師の支援も必要かもしれません。

 医療だけで解決できることは少なく、多くの支援者につなぐこともまた私の役割のひとつと考えています。



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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