在宅医療の診療所ですが、慢性期の現状維持を目的とするものと、皮膚科など、目に見えて治すという医療の組み合わせです。専門医がいるという事だけでなく、ちゃんと治療するという事です。
こんな事は当たり前だと思うでしょうが、当院の専門医が訪問するようになって治りましたというご連絡を沢山いただきます。実際に、「あそこの先生が来たら治った」という口コミほど強いものはありません。
地域からのリクエストとして多いのは精神科、皮膚科、整形外科、形成外科、耳鼻科、眼科です。その中でも皮膚科への期待は大きかったです。特に老人ホームなどの施設から、皮膚科の往診依頼が沢山ありました。
初めて施設の責任者の方が当院を訪ねて来てくれた時の事ですが、地域の他の皮膚科医から断られたと言っていました。「最低20名いないと訪問しない」「月に2回の訪問をしないと行かない」などが理由だそうです。
それでは当院はといえば、「1名だけでも訪問しますよ」「月1回でいいですよ」と、それだけであそこの診療所は患者1名だけでも来てくれる、月1回だけでも大丈夫、という噂になるようです。
確かに、1名だけ1回限りの訪問では人件費は赤字となります。しかし、実際に訪問してみると「ついでにこの患者さんも見てください」など、気付くといつの間にか人数が増加しています。
初めての訪問から黒字にしようとすると、あそこの診療所は金もうけ主義だと、むしろ良い口コミよりも早いスピードで悪い噂が地域に広がります。その上で今まで内科の先生が見ていたが治らなかった患者さんの「ここのクリニックにかかったら治った」という口コミは、次の患者さんに繋がって行きます。
ちなみに悪い噂は良い噂の10倍以上のスピードで広がります。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。