新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は終息の兆しがみえません。訪問診療を中心とする当院では診療体制に大きな影響はないものの、近隣の医療機関はたいへんなことになっています。訪問診療のクリニックも、プライマリ・ケアのゲートキーパーとしての役割を大いに発揮し、地域の医療資源の適切な活用に努めるべきときと認識しています。
さて、今回は介護施設における在宅医療についてお話したいと思います。当院でも介護付き有料老人ホームやグループホームに訪問しています。特に都市部では今後も高齢者数の増加に合わせて増加し、私たち在宅医にとっても重要な診療の場となっていくことは間違いありません。介護施設は個人宅で行う訪問診療と異なり、服薬や食事などコントロールが行いやすい一方、施設スタッフとのコミュニケーションなど新たな問題も発生します。またスタッフの力量によって患者のケアに大きな影響を与えてしまうことがあるため、それらにも配慮する必要があります。基本的な考え方は個人宅と変わらないのですが、多少違った視点をもって対応することが求められます。
私が訪問しているある施設でかつてこんなことがありました。看護師常駐の施設ですが、ケアが適切になされず、褥瘡ができる患者が増加していました。その他にも、転倒が多い、報告すべきことが報告されないなど問題山積み、当院のスタッフたちも辟易し、それが相手に伝わってさらにコミュニケーションが悪くなるという悪循環が起きていました。
これではいけないと、まず褥瘡が悪化しているある入居者1名に焦点をあてて、『〇〇さんの褥瘡を治そう!』というプロジェクトを立ち上げました。さらに、勉強会と称して施設スタッフと当院のスタッフが双方の考え方を伝える会議と懇親会を行いました。
その会は、スタッフ間の関係性を大きく変える出来事となり、以降一緒に患者・入居者を看ていくという協力体制を作ることができています。
医療者と介護者は対立構造になりがちです。まず変わるべきは私たち。患者やご家族、施設スタッフの行動を変えるには、自分が変わることが鉄則です。介護施設のケアの質がまちまちなことは否めませんが、どんな施設に対しても同じレベルの医療を提供するための仕組みづくり、それもまた施設在宅の面白さといえるでしょう。

【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。
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