在宅医療最前線5/20号【在宅たかせ塾】在宅患者さんの睡眠障害とのたたかい

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2020-05-20

 新型コロナウイルス感染症に気を取られている間にあっという間に桜の季節はすぎ、初夏を迎えました。新型コロナウイルス感染症の蔓延が私たちの生活にもたらしたものは大きいですね。訪問診療については診療報酬上の配慮がなされ、一部電話診療となっても在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料が時限的に算定できるようになりました。とはいえ、訪問診療が必要な患者はもともと重症な方が多く、訪問せずに電話だけで対応できる方は多くはありません。
 
 また当院近隣では、緊急時の入院ができる病院が減ってしまい、厳しい状況が続いていたため、できる限り入院せず自宅で過ごそうとお話しし、往診頻度を上げて対応した患者さんもいます。私たちスタッフの感染管理についても改めて見直す機会となりました。本来は通常時でも行うべきだったができていなかったと反省し、改めて院内の指針を作って対応しています。

 急に気温が上がり、体調を崩す方が増えています。外出の機会が減って生活リズムが変化してしまった方もいます。そこで重要なのが睡眠管理ですね。認知症の方は特に夜間のせん妄や周囲には目的がわからない奇異行動なども加わって、介護者の休息時間を奪ってしまうことがあるため、夜間帯(0時~5時)に寝てもらうよう調整しようと話すようにしています。夜中に目が覚めて眠れないという方のなかには、夜20時に寝て2時に起きてしまい、その後眠れないと訴える方がいます。しかしさすがに6時間も寝てしまったらそれ以降寝るのは難しいでしょう。高齢者は「遅寝早起き」がキーワードです。

 睡眠薬を使わざるを得ないことが多いですが、私はメラトニン受容体作動薬のロゼレム®や、オレキシン受容体拮抗薬のベルソムラ®などを使うことが多いでしょうか。鎮静作用の使い抗うつ薬であるトラゾドンやミアンセリンが効くこともあります。
 ここで問題となるのが、長いこと服用を継続しているベンゾジアゼピン系薬剤ですね。これは言ってみれば「とてもよく効く薬」なので、精神的依存を起こしやすいことが問題です。ふらつきが転倒を招くこともありますし、認知機能低下やせん妄の原因となることもあります。時間をかけて少しずつ少しずつ減らしていきますが、長いこと頼ってきた薬を患者さんから取り上げるのは難しいですね。
根気とコミュニケーション能力が試される瞬間と覚悟を決めて取り組んでいます。



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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