在宅医療最前線6/3号話が長い

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2020-06-03

 医師や看護師への患者さんからのクレームには「話が長い」という苦情があります。
なぜか病気に対する要点をうまく話せないという医師がいます。ダラダラ説明するので、患者さんからすると要点がわからずイライラしてしまいます。優秀な医師や看護師は簡潔に解りやすく病気の説明をし、今後の治療方針について家族と話しをします。
話しの長い医師はなぜこんなにダラダラ話すのでしょうか?

 ダラダラと長く話す理由は医師の防衛本能です。自分を守る為に考えうるすべてのリスクを説明します。あれも、これも全部話します。確率の低いことでもダラダラ説明します。―あとで患者さんや家族から「聞いてなかった」と言われたくない。そんな気持ちの表れなのです。

 話の長い医師はカルテへの記載もやたら長いです。まるでカルテではなく小説なのではないかというくらい小さい字で沢山の記載をします。ダラダラ説明したことをダラダラとそのまま記載します。
あまりに沢山の事を言うので、患者さんは判断に迷います。初めに聞いた事を覚えていません。選択肢が多すぎて患者さんはどの治療内容が良いのか選べません。その結果、患者さんは「じゃあどうしたら良いのですか?」って事になります。

 リスクを取りたくない医師は当然、自分が良いと思う方法を伝えるのではなく、沢山の選択肢から患者さん、家族に選択させます。(横で聞いていてもベストはどれ???と思います) 良いドクターは治療方法について上位3つくらいを説明し、その治療方法のメリットとデメリットを話して、患者さんや家族に選択してもらうという事をします。

 選択肢が10個もあったら素人の我々は選べないですね。ましてやお年寄りの方には理解ができないような難しい言葉を並べたりします。そして言われた傍から忘れてしまいます。逆に選択肢を全く出さない医師がいます。患者さんにちゃんとした説明をしないまま自分が一番やりたい医療をやってしまう医師です。たとえその治療法がベストであっても結果的にトラブルになります。説明責任があるのですから。

 医師よりもこれは看護師さんの方に多いのですが、説明のワンセンテンスがやたら長い人がいます。主語と述語が無くて日本語そのものになっていません(人生どうやってコミュニケーション取ってきたのだろう)。こういう人の文章は、言葉と同じでレポートを見ても要点が全くわかりません。

 ワンセテンスが長いという人の特徴ですが、話をしている間に中身が変化するということもあります。もしかすると頭が良すぎるのでしょう。頭の中で同時に複数の事を考えています。そのすべてがワンセンテンスに盛り込まれます。この長い、長いワンセンテンスに口を挟むタイミングが難しいのです。餅つきの餅をひっくり返す人のことを手水(てみず)というらしいですが、杵の動きが早すぎて手水を打つことが出来ません。会話の途中で割り込むと頭や手を杵で叩かれてしまいますね。

 まずは患者さんの言いたい事をしっかり聞くことが大切です。話し上手よりも聞き上手の方が患者さんに好まれますが、この場合は話し上手にもなってないですね。(患者さんの中にはダラダラ長く説明をしてくれる医師が大好きな患者さんもいます。すごく丁寧に話してくれたと大変喜んでくれている方もいます。)



【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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