在宅医療最前線6/23号老人ホームの連携病院は誇大広告か?

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2020-06-23

 老人ホームのパンフレットを見ると、提携している医療機関の名前が書いてあります。訪問診療をしてくれる地元の診療所と緊急時に入院をさせてくれる病院です。けして老人ホームのパンフレットに物申すわけではありませんが、パンフレットに出ている提携病院は、地元の一番大きな病院が1つだけ記載されています。

 確かに連携医療機関で間違いはありません。老人ホームがなぜ一番大きな病院を1つだけ載せるのかですが、中小病院を掲載するより、地元の大きな病院の名前を掲載した方が入居者は集まりやすいと考える節が見え隠れします。スペース的に全部の医療機関を載せる事が難しいというのもあるかもしれません。入居を考えているご家族は、この病院と提携しているなら大丈夫と入居を決める方もあるかと思います。そう思った方がいたら老人ホームの思惑通りかもしれません。

 病院には役割があります。医療は全てその病院だけで完結するわけではありません。急性期病床、亜急性期病床、慢性期病床といったようにいくつかの種類があります。
 
 外来受診や入院の目的には色々なパターンがあります。パンフレットに書いてある、地域の大きな病院ですと、恐らく急性期の病院という事が多いはずです。入院の目的が本当の急性期であれば問題はありません。入院には検査入院、レスパイト入院、最後に看取りを目的とする入院、IVHや胃瘻などを挿入するための入院それぞれの役割に応じて病院を選ばなければなりません。

 しかし、パンフレットを見たお年寄りやご家族は、パンフレットに掲載されている医療機関が自分たちを優先してすべて診てもらえるような錯覚をする人もいます。中には老人ホームのスタッフさんでも勘違いしている人がいて、病院に対して、うちは提携しているのだから待ち時間なしで診てください、と苦情を言う人もいるようです。

 地域の病院にはそれぞれの役割があります。無駄な病院はありません、社会資源としてすべてが必要な病院なのです。社会資源は上手に使ってこそ社会資源になります。殆どの方は地域内の病院がどんな役割を担っているかを知らないのです。老人ホームの職員の方でさえその役割を理解している人は少ないのです。

 タイトルに「誇大広告」などと書いてしまいました。それが解っていて集客目的で確信犯でしたら「誇大広告」なのでしょう。実際には解っていないというのが事実なのかもしれません。老人ホームの職員の方やご家族の方が、あまり病院の役割について存じていない方が多いです。救急車で運ばれてそのまま帰されてくるような事もあるかと思います。家族と一緒になって病院の悪口を言っている事もあります。
本当は社会資源の使い方が間違っているのです。



【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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