気持ちのいい季節がやってきましたね。今年はいつもと違う秋ではありますが、暑くもなく、寒くもないこの時期を楽しく健やかに過ごしたいですね。クリニックの方はこの季節の風物詩、インフルエンザの予防接種でいつもより慌ただしくなっています。寒くなる季節に向けてさまざまな準備が必要です。
先日、2-3日前から動けなくなっている方がいるので診てほしい地域包括支援センターより連絡がありました。行ってみると一人暮らしの90歳。「立てなくなっちゃったのよー」といい、トイレに行くのもままならない様子。昨晩はベッドにも行けず、部屋の真ん中で寝たとのこと。食事は近所の方が運んでくれていたとのこと、何十年もこの地に住み、地域でコミュニティを築きながら生活してきたと伺えました。
そんな身体の状態ですから、室内は荒れており、私たちの感覚ではここでの生活継続は難しいと思われましたが、本人は絶対ここを離れたくない!の一点張り。立てなくなってしまったことの原因検索だけでもと病院受診を勧めますが断固拒否。5日間毎日通ってやっと説得に応じ、救急車にて近隣の病院に入院することができました。
さて次の問題。入院先の病院では食事もよく召し上がり、リハビリにも積極的とのこと。それはひとえに自分の家に帰るため。しかしこの方、お子さんも含めてすでにご家族が亡くなられており身寄りがありません。退院後の生活をどのようにそのように組み立てるのか。さまざまな契約手続きの問題もさることながら、何より難しいのは本人の意思を本人の生活にどのようにリスクなく反映していくのかという視点。自宅に帰る!という本人の希望を叶えるには、徘徊、転落、出火といった危険をできる限り回避しなければなりません。
また、いつかはここでの生活ができなくなる可能性があることを本人にも少しずつ説明していく必要があります。地域の力を結集して進めていく合意はできているものの、私たちにも覚悟が必要です。地域のスタッフがバーンアウトしないこと、そのための仕組みづくりも急務だと感じます。

【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。
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