病院からの診療情報提供書を見て、「あまりに重症過ぎるから断りたい」とかパーソナリティーに問題がある患者さんに対して入院を機に退院時の再受け入れを拒否したり医師も人間なので、断りたい患者さんがいます。
こういう時、医師は「今、患者が多すぎて受け入れができないので、他の診療所を当たって下さい」とケアマネに言ったりします。
「患者が多すぎる」「キャパオーバーです」という理由は一見、当たり障りの無い断り方です。しかし「患者が多すぎる」「キャパオーバーです」とう理由は勝手に地域の中に広がります。しかもアッという間に。地域のケアマネは○○診療所はもういっぱいみたいだよ。受けられないよ。こんな噂が広まると、全く新規の患者紹介が来なくなります。
もう1つの患者のパーソナリティーに問題がというケース、実はキーパーソンの息子さんが反社会勢力の方、いわゆるヤクザさんです。どうもこの患者さんの家族が苦手だという事で入院をしたことを幸いに退院時に受け入れを拒否、「他の診療所を探すように」とケアマネに言いました。しかも理由は先ほど同様「患者が多すぎる」「キャパオーバーです」と言います。
そんなウソはすぐに解ります。訪問看護ステーションの看護師や担当ケアマネジャーからはあの先生は裏切った、ウソを付いたと言われ新規の患者は来なくなります。大変な患者を診ている、医師、看護師、ケアマネの方々はその時は皆さん同志なのです。その1人が逃げ出したという事ですから、他の人たちからは裏切り者になります。
ウソの禊(みそぎ)の期間は概ね1年です。1年後からまた新規患者が紹介されるようになりますが1年間も、そのケアマネの事業者や訪問看護ステーションからの新規患者さんの紹介は来なくなります。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。