在宅医療最前線1/20号【在宅たかせ塾】ネグレクトの対応の難しさ

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2021-01-18

 「年末年始も休みなし」は訪問診療のクリニックはいつものことですが、さすがに今年は例年とは違う年明けとなりました。これだけの感染拡大状況を鑑みれば致し方なく、覚悟を決めて臨むしかありませんでした。

 さて、5年ほど前から訪問診療をしている患者さんについてお話をしたいと思います。難聴がありかつ複雑なやりとりは不可、ひらがなのみを使った筆談でこちらの質問に対し「はい」か「いいえ」で答えてもらう形でコミュニケーションをしてきました。家族関係はなかなかに複雑で、主な介護者は遠い親戚、金銭管理は血のつながらない兄でさまざまな意思決定もなかなか順調にいきません。

 昨年、肺炎となり入院、急激な体力低下があり、退院後はほぼ寝たきりの状態となってしまいました。しかし家族による介護は受けられず、食事は与えられず、オムツ交換もしてもらえないという状態で、デイサービスでのケアが唯一。いわゆるネグレクトであり、地域包括支援センターとも協力し早急の施設入居等の調整をしましたが、そうこうしているうちにどんどんご本人の体力が低下、褥瘡も悪化、一刻を争う事態となりました。なんとかご家族を説得し、近隣の病院に入院することができ一安心、病状も落ち着き回復すると思った矢先、重症肺炎により息を引き取りました。

 なんとも残念な結果となり、無念です。もう少し早く対応していたら、ご家族にもう少し強く対応していたら等々いろんな思いが残ります。ご本人とも円滑にコミュニケーションができない、ご家族は非協力的、ご本人の衰弱が想定以上に早かった、いろんな条件が重なりこのような形となってしまいました。ご冥福をお祈りするとともに、今後私たちの医療・介護現場にどう生かすかスタッフ一同考えなければいけないと思います。



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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