在宅医療最前線2/17号【在宅たかせ塾】認知機能低下と契約行為

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2021-02-17

 最近、認知機能低下がある方が行った契約や遺言書の有効性を争う事例に出くわすことが増えてきました。多額の買い物をした、自宅を売却した、遺言状を書いたといった法律行為の有効性に対する疑義がご家族からあがり、係争案件となり、裁判資料としての診断書や意見書やカルテ開示を求められるようなケースです。

 ご家族が一枚岩であるときはともかく、場合によっては家族間のトラブルが隠れていることもあり注意が必要です。必ずしも詐欺にあったといったことではなく、正当な契約行為であっても契約時点において民法用語でいう意思能力(法律上の判断ができる能力)がなかったということになれば、契約は無効となります。

 認知症の方が合理的判断ができずに財産処分してしまうといったことは避けなければなりませんが、それらの契約がすべて無効となればそれもまた問題で、高齢者が意思に応じた適正な契約行為ができないといった時代がくるかもしれません。医師がどこまでかかわるべきかという問題はありますが、財産処分は生活支援と不可分である面も否めず、それらに明るい士業(弁護士、司法書士、税理士等)と必要に応じて連携できる体制を構築することが求められています。

 今後認知症者の増加に伴い、こういったトラブルは増えていくことでしょう。患者さんご本人を守るためにも、在宅医の役割として、臨床的な所見だけでなく一度は画像検査を行って確定診断を得ておくことや、定期的な認知機能検査の実施による経時的な変化を把握しておくことがより重要になると感じています。



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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