在宅医療最前線5/19号【在宅たかせ塾】在宅でしばしば出会う老年期うつ病

髙瀬 義昌(医療法人社団至髙会 理事長)

2021-05-19

 高齢者の新型コロナウイルスワクチンの接種が始まりましたね。在宅療養中の患者さんのワクチン接種をどう行うか、頭を悩ませています。みなさんの地域ではいかがでしょうか。

 さて今回は当院でもしばしば出会う老年期うつ病についてお話したいと思います。認知症かなと思ったらうつだったとか、認知症と合併して現れたりしますが、治療によって改善する疾患であるため、適切に鑑別して対処することが大切です。

 老年期うつ病は若年期のうつ病と異なり、抑うつ気分や意欲の低下などが現れず、不眠や食欲低下、自律神経症状などの身体症状が目立ちます。また、最も大きな違いは、それらの症状に対して過剰な心配や恐怖などを感じて大騒ぎすることがある点です。「大騒ぎ」は一見元気に見えますから、うつ病の印象とは大きく異なります。  

 「病気が悪くなった」と何度も病院を受診する、「お金がない」と何度も息子に電話をかける、亡くなった夫が「帰ってこない」と何度も警察に電話をする、最近会えない孫が「死んだ!」と近所の方の家に言いにいくなどなど、当院で実際に経験したうつの症例です。高齢だとこれらの行動は認知症の症状と判断しがちですが、認知症のスクリーニングをすると意外と点数がよくて辻褄が合わないことがあります。また、抗うつ薬の処方によって劇的に改善します。睡眠障害に対処することも重要ですね。

高齢者の症状は個人差が大きく、非定型的なことが多く生じます。まだまだ精進しなければと日々感じています。



【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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