在宅医療の患者さん性善説がありますが、実際には患者さんには色々な方がいます。ある時、患者さんのお宅に3時間ほど軟禁された事がありました。患者さんの個人情報に関する事は書けませんので、病名や詳しい情報は差し控えます。
患者さんのお宅についた瞬間、違和感がありました。家の外に高級外車が2台停まっていました。自宅に入りますといかにもそっち系の方がお二人いました。いかつい方々が医師の前にテープレコーダーを置いて「医療ミスをしましたと言え」と言っています。
もちろん医師は医療ミスをした訳ではありません。丁寧にカルテを見せて説明しています。いかにもそっち系のお二人は医師の説明など聞く耳をもちません。いやそんな話はどうでも良いのです。
ただ「医療ミスをしたと言え」、結局3時間軟禁のされ相手の要求はやっぱりお金なのですね。でも直接は言いません。例のあのセリフです。「誠意を見せろ」「俺の言いたいことはわかるよな」
この話を知り合いの先生にしましたら、俺なら「解りました誠意をみせます」って言ってお花を贈るけどな~なんて言っていた先生がいましたが、とても緊迫したこの状況ではそんな気が利いたセリフは言えません。
こちらとしては言質をとられないように必死です。なんとかノラリクラリ相手があきらめるまでその日は居ました。一度クリニックに帰って検討させて下さいと言いその日はなんとか帰ることが出来ました。
もし夜間の往診依頼など医師が一人で訪問した時に再び軟禁されると危険な状況になります。すぐに弁護士へ相談して内容証明を送り訪問診療の契約を解除しました。それから1年半も経ってその方々、契約解除に対しての契約不履行、応召義務違反、慰謝料ということでかなりの金額の請求の裁判を起こしました。
2年間もの裁判の結果、こちらの勝訴にはなりましたが、とても後味の悪い経験でした。本当は裁判の様子も詳細に書きたいところではありますが、寝た子を起こしてもまずいので簡潔に書きました。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。