地上で見る景色、ビルの10階から見る景色、東京タワーで見る景色、高さが変われば見えるものが違ってきます。「何で気づかないの?」「何でやらないの?」「何で解らないの?」皆さん、自分が見えている景色は誰でも同じ景色だと思っています。
患者、医者、ケアマネージャー、訪問看護師、ヘルパー、その他様々な職種の方が在宅医療の現場には関わります。それぞれの立場で見え方、感じ方が違います。それは患者さんとの関係性が違うからです。各職種により優先順位が違うからです。
医師の視点
・重症度
・緊急性
・生命の維持
訪問看護師の視点
・処置
・安全管理
・QOL
ケアマネージャーの視点
・ケアマネージメント
・家族の負担軽減
・本人の自立支援
MSWの視点
・経済力
・介護力
・社会資源の活用
ヘルパーの視点
・日常生活の支援
・清潔の保持
・介護
患者と家族の視点
・上記すべて
他にももっと沢山ありますが、とりあえず上記のような視点で患者さんと関わります。
医師は命に関わる事を重要視して、看護師は処置などを中心に看て、ケアマネージャーさんは介護力を注視、MSW(メディカルソーシャルワーカー)は家族構成や介護力の他 経済力や人間関係などそれぞれの視線が違うのです。ですが目的は患者さんを医療や介護で生活を支えるということなのです。目的は同じですが、それぞれの立場で優先順位が違う事です。
優先順位が違う事から、ケアマネージャーは何で先生やってくれないの?となります。薬の飲み合わせなどにより、やってあげたくても出来ないというタイミングが有るようです。一緒にその場に居ればお互いにある程度の理解はできるのでしょうが同じ曜日、同じ時間に一同で会するという事はそんなにありません。ケアカンファレンスという事が大事なのですね。
勝手な線引きや思い込みが起こります。そんな重点視点が違う事からクレームになることも有ります。皆さん、いずれも正しい事を言っているのです。必要な事で、間違った事を言っている人は誰も居ないのにすれ違いになることもあります。最近は他職種連携という言葉が良く出てきます。当院と他の会社や施設のスタッフさんとだけの問題では無く全国的に医療、介護現場の連携についての課題なのでしょう。他の会社との情報共有は個人情報保護との兼ね合いもあり、システム化にはちょっと気が重いと思う医療側の考えもあります。コミュニケーションは難しいですね。
もう1つトラブルが起こる原因ですが、相手への勝手な期待値という物があります。先ほどは思い込みと書きました。思い込みの原因が勝手な期待値という事なのです。勝手な期待値とは相手が「やってくれるはず」、「これくらい出来るだろう」など勝手に描いた期待が相手への怒りとなる事もあります。(医療の世界、特に医師、看護師に多い)単にコミュニケーションが足りないのが原因です。やってもらいたいのであれば、きちんと言葉や書面で伝えなければなりません。「一を聞いて十を知る」そんな超人はなかなか居ません。僕もそのような人間になりたいです。
他社や他職種との連携がうまくいくお家があります。家族の理解力が高いお家です。医師の説明をちゃんと理解できる家族がいるところは上手に訪問看護師さんやヘルパーさんたちと連携が取れます。ただしこのようなご家庭ばかりではありません。むしろ少数派です。理解力が乏しく病識が薄い患者さんとご家族は理解が出来ないので、それが愚痴になっていたり、他職種の方に質問したりという事もトラブルの原因になります。先生に直接聞かず他社のスタッフに聞いて、しかも質問の内容が正しくないというのがトラブルになる原因なのです。だからと言って「家族が悪い」とい終わらせてしまっては良くないですね。
「先生に聞くのは申し訳ない」、「何回も聞いたら悪い」、「先生は忙しいのだからそんなに時間を取ってもらっては申し訳ない」。患者さんやご家族にとって医師は敷居が高いのです。医療機関も風通しを良くして、少しでも敷居が高くならないように、一方通行の医療にならないようにする事が必要ですね。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。