在宅医療最前線11/23号地域に選ばれる在宅医療診療所

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2021-11-23

 最近は在宅医療を行う診療所は沢山増えました。地域によっては患者さんの取り合いです。ライバル診療所が増えましたので、患者数は簡単には増やすことが出来なくなってきました。そこで大切なことは自分の診療所の強みは何かという事です。他院と比較して自分の診療所が出来ている事、出来ていない事 まずは客観的に考える事が大切です。よく言う「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という事です。出来ていない事はどうやったら出来るか知恵を出すのでしょう。出来ている事はどうやってそれを地域に知って貰うかです。どんなに優れていても地域の方が知らなければ全く意味がありません。見せ方、伝え方がというのが大切です。

 在宅医療において地域から選ばれる診療所とはどんな所でしょうか。いわゆる差別化戦略です。最近は地域の中で在宅医療を行う診療所が本当に多くなりました。当然の事ですが、激戦エリアでは、サービス競争が激しくなります。ライバルが多い地域ほど夜間の往診依頼は厳しくなります。ライバルが無く独占している地域では先生が普通に来てくれるだけで感謝してくれます。需要と供給のバランスで在宅医療機関への要求度は変わります。

 「24時間365日」なんて在宅医療の診療所でしたら当然だと思うでしょう。在宅医療を行う上で永遠の課題です。
1人で開業していれば電話に出られない時間は必ずあります。地下鉄に乗っていたり、お風呂に入っていたり、電話に出られない事は起こります。そういった事を無くす為にはオンコールを持つ人間を増やすしかありません。医師が1名しかいないのであれば事務員さんや看護師さんにもお願いして、数名でオンコールを持ちます。まずは取次だけでも電話が繋がる事が大切です。そして夜間、24時間の往診が出来るか否かが差別化なのです。電話は必ず医師が取らないといけないと思う先生たちもいるようです。患者さんや、ケアマネージャーさんもそう思う人がいます。日中 先生が往診をしていれば、クリニックに電話をした時に電話口に出るのは事務員さんです。事務員さんが電話に出て、医師に連絡をします。しかし、夜間のオンコールに医師以外の人間が電話口に出ると怒る方がいます。何故、昼間は良くて夜はダメなのでしょう。夜も昼間と同じように事務員さんが出て、先生に取次ぎをしても同じですよね。1人だけでオンコールして連絡がつかない方がリスクのはずです。夜は医者が電話に出るものだという。皆さんのイメージであり、思い込みなのです。

 イメージというと夜間の往診についても思い込みがあります。医師と患者さん、ご家族とイメージの隔たりがあるのです。患者さんは電話をしたら10~30分くらいで飛んで来てくれるようなイメージが有りますが、夜間お往診はそんなにすぐには行かれません。深夜、医師が就寝中に電話がかかるのです。着替えをしてクリニックへ往診道具やカルテなどを取りに行きます。患者さんのご自宅に着くまでは早くて1時間ちょっと何かあれば2時間くらいかかる事もあります。救急隊と違いサイレンを鳴らして信号無視して訪問することはできません。道路交通法も守らなければいけません。法定スピードで移動します。10分くらいで到着など出来る訳がないのです。でも患者さんのご家族は往診のイメージはすぐに飛んで来てくれるものだと思っています。深夜の緊急往診のイメージが救急隊のイメージとダブっているようです。折角1時間後に往診して患者さんのお宅に着いたら「遅い」と叱られるのです。

 日ごろから患者さん、ご家族に深夜の往診には時間がかかってしまう事をきちんと説明しておかないといけないですね。
1回だけではダメです。日ごろからそのイメージを植え付けておかないとトラブルになります。それから往診で済む時と、往診では対応出来ないものがあります。どうしても病院へ入院しなければならい時があります。それもちゃんと患者さんに話して理解しておいて頂かないといけません。

 こういうケースでは入院しなければいけないという事をちゃんとご家族にお話ししておきます。自宅を血だらけにして手術などする訳にはいかないのです。しかるべき場所でしかるべき処置をする必要があるのです。全てなんでも自宅でできる訳はないのです。ご家族にしっかりと理解してもらう事が大事です。

 「医療依存度の高い患者さんを診る」
言うまでも無く差別化です。末期の癌患者さんやALSで人工呼吸器を着けた患者さん、小児の在宅医療などは地域の受け手が少ないです。他の医療機関が診られない患者さんを診るという事が差別化になります。国の方針で病院以外の場所での看取りを政策的に誘導しています。今、病院からは重傷者も在宅に帰ってくる時代になりました。

 「専門医に寄る在宅医療」
在宅医療と言いますと、内科というイメージが一般的です。実際にはそれ以外の診療科も必要です。在宅医療の患者さんは高齢者が多いです。高齢者には皮膚科、精神科、整形外科、などのニーズは高いのです。在宅医療とは1人の医師が総ての診療科を診ないといけないというのもイメージであり錯覚です。プライマリケアとか、総合医とか、家庭医とかそんな言葉があり何でも診れるドクターを育てようという風潮もありました。医師免許さえあれば全部の科を診る事は可能です。でも専門医は専門医やっぱり専門家は凄いです。当たり前ですが患者さんは治して欲しいのです。専門医の強みであり、医療機関の差別化でもあります。

 地域から見ると複数の医師が居る在宅医療機関は頼もしく思えます。1人だけより、パートでももう1名居るだけで違って見えます。医師の名前が沢山出ているとそれだけで差別化です。そういえば弁護士事務所でも10人くらい弁護士さんの名前が出ている事務所とか有りますが、そこの事務所が強そうに見えます。医師に限らず、看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、メディカルソーシャルワーカーなど沢山のコメディカルが居る事も差別化です。在宅医療の集患方法は様々ですが、地域1番店を目指して、差別化を考えてはいかがでしょうか。それから差別化とは地域の人が知ってこその差別化です。知らなきゃ差別化でもなんでもありません。宝の持ち腐れです。見せ方、伝え方を工夫しましょう。


【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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