私が普段なんとなく、ぼんやりと感じていることです。
なんの根拠もありませんが、家族構成で介護に一定の共通点があります。
在宅医療を受けている患者さんのご家族にはパターンがあるのです。
① 1人娘が介護者の場合
在宅医療でもモンスターに変身する方がたまにいます。
これまで4~5人ほどモンスター化した患者さんの共通点ですが、全員が一人娘で未婚。
両親と娘の3人暮らし。
このパターンでは共通して娘がモンスター化しました。
モンスターの内容については、いつか機会があれば記載したいと思います。
② 1人息子が介護者の場合
①と同様に一人息子でお母さんと2人暮らし。
息子が仕事をしながら、献身的に介護をしている。
このパターンではDVになる事が多いです。俗に言う老人虐待です。
しかし虐待をする一方で一生懸命介護もしています。
親を愛しているのが周りからみていても解るのに、時折爆発します。
介護ストレスがマグマのように溜まっているのでしょうか。
③ 娘2人が介護者の場合
娘2人と両親という家族構成の場合、2人のどちらか一方が介護ヒロインとなっています。
どちらか片方が徹底的に介護をしますが、もう1人の娘は全く介護をしません。
臨床心理士さんに何故こうなるのか聞きに伺った事があります。
皆、1人が介護ヒロイン、もう1人は全くやらないというパターンになるのはなぜなのでしょう。
どうやら幼少期からの親の育て方に原因があるようです。
数十年前の幼少時代から、
両親はどちらか片方の娘に、頼みごとをしてもう1人にはあまり頼まない。
または子供との話し方で
「●●ちゃんは、いい子だね~」
などという言い方で数十年をかけて、洗脳されているとの事です。
もちろん親の方に洗脳している気持ちは無いはずですが、幼少期から片方だけにお使いをさせたり、お手伝いをさせたりという事を自然にしているとの事です。
私の周りにも2人娘という方が居ます。
確かにいつもお姉ちゃんにお願いをしています。
お姉ちゃんはお母さんから頼まれて、褒めてもらう事が嬉しくて、嬉しくて仕方ないです。
こんな若い夫婦を見ていると、僕は勝手に2人娘に対して「あ~~ こっちの子が介護をするんだな」と、勝手に思っています。
④ 娘3人が介護者の場合
私の中では、実は介護の理想かと思っています。
これまで見てきた3人娘という家庭の共通点ですが、娘3人が介護時時間割表を作って曜日毎に交代で介護を行っています。
特に一緒に同居していることでなく、それぞれの自宅からやって来て交代で仲良く介護しています。
幸いにして私には現在娘が3人居ます。
将来きっと娘3人が交代で介護をしてくれると、淡い期待をしています。
我が家も実は娘が2人の時はなんとなく次女にお手伝いをしてもらう事が多かったです。
3人目の娘が生まれて、三女が小学生になった時、私の奥さんはお手伝いの当番表を作ってしました。
お風呂掃除当番、ゴミ出し当番、食事の後のお片付け当番、新聞を取ってくる当番など円グラフのような当番表を作って交代でお手伝いをしていました。
不思議ですね。2人と3人で自然と親の育て方が変わるのですね。
この表を見たときに将来の介護は当番制になるなと確信致しました。
⑤ 息子2人
残念ながら、お嫁さん次第です。長年の嫁、姑の関係が大きく左右するようです。
嫁、姑の関係が良好だったところは実の娘より献身的に介護をしてくれます。
ところが長年にわたり嫁イビリをしてきた姑はいつの日か力関係が逆転をして、嫁にイジメられる立場に変わります。
積年の恨み、辛みがあります。
介護が必要になった時に虐待になるような事があります。
外部の人間から見ると酷い嫁に見えます。老人虐待です。
しかし何十年に渡りイジメられていた嫁からすれば、献身的に介護を出来るような心境には無いでしょう。
折角ですので少しDV(高齢者虐待)について少し書いてみます。
高齢者虐待とは平成18年4月1日に「高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止・養護者支援法)が施行されました。
この法律の中で高齢者虐待には区分があります。
1.身体的虐待
・たたく、つねる、殴る、蹴る、やけどを負わせるなど
・ベットにしばりつけたり、意図的に薬を過剰に与えるなど
2.ネグレクト
・空腹、脱水、栄養失調のままにするなど
・おむつなどを放置する、劣悪な状態や住環境の中に放置するなど
3.心理的虐待
・排泄などの失敗に対して高齢者に恥をかかせるなど
・子供扱いする、怒鳴る、ののしる、悪口を言う、無視するなど
4.性的虐待
・懲罰的に下半身を裸にして放置するなど
・キス、性器への接触、セックスを強要するなど
5.経済的虐待
・本人のお金を必要な額渡さない、使わせないなど
・本人の不動産、年金、預貯金などを本人の意志・利益に反して利用するなど
5番目の経済的虐待については成年後見制度や認知症の度合いなどもあるので、判断は難しいですね。
在宅医療を行う医療機関の医師が虐待に気づいた場合は市区町村の相談窓口への通報が義務化されています。
市区町村によってルールは違いますが、市区町村の窓口にて相談後に行政が調査を行います。
状態により、市区町村から、警察への通報や告発を行う事になります。
命に危険があるなど、状況によっては家族から引き離すなどの対策もあります。
上記の様なルールはありますが、現状お役所の立場で家族から引き離すなどの処置を行うのは判断が難しいようです。
実際にはDVが行われていても放置になっているケースもみます。
だからと言って医療機関がDVを見つけたのにも関わらず、そのまま放置という事をしてしまっては万が一事件となった時に責任問題にもなりかねないという現実がありますので、通報義務は守るようにしています。
わが身を守る為に
DVを見つけたら
① 行政の窓口へ相談。
② 内容をカルテに記載。
③ ケアマネージャーや訪問看護師とケアカンファを行い記録として残す。
という事までは最低限必要です。
市区町村では老人への虐待の実態調査を行っている所は多く、ホームページなどにも調査結果を公表しています。
老人虐待の件数は世間が思っている以上に多いようです。
医療や介護の現場で老人への虐待を感じていても、実際には虐待かそうでないかという線引きは難しいようです。
また虐待と判断されても第三者が介入することは困難です。
今後も解決する問題ではありませんが、介護者のストレスを取り除く仕組みや通報者を保護する仕組みなども必要ですね。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。