コロナ禍3年目の年末年始ですね。以前と比較して、新型コロナウイルスについてさまざまなことがわかるようになった今、かつてのような過剰な恐怖心は減ってきたとはいえ、高齢者にとってはさまざまな面で致命傷となり得る感染症であることは間違いありません。近隣病院も病床が逼迫しており、連携を密に取りながら地域の最適化を目指す毎日です。
地域の高齢者と接していると、認知症とは少し違うような、不可解な言動をし、家族や近隣とトラブルになるようなケースにときどき出くわします。その中のひとつに、「激越型のうつ」と呼ばれる症状があります。老年期にうつを発症しやすいことはよく知られていますが、若年層のうつと異なり、抑うつ気分や意欲の低下を代表とする元気がないと感じるような症状より、自律神経症状や痛みの訴え、不眠などの身体症状を強く訴え、さらにそれらを過剰に気にします。
「大騒ぎする」と表現されるような言動をとることもあり、とてもうつ病患者には思えません。希死念慮の訴えが多く、自殺率が高いとも言われています。認知症と合併することもあり、判然としにくいこともありますが、環境調整とともに、NaSSAやSSRI、SNRIを少量使用することで著効します。精神症状の捉え方はなかなか難しいですね。

【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。