春ですね。東京では桜が咲き始めました。今年は体感的にもかなり暖かく、桜の開花も例年より早い印象です。さて、先日野原幹司(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室)先生のお話を聞く機会がありましたので、そのお話を。
野原幹司先生は、歯科医の立場から長く嚥下機能障害に取り組まれており、書籍も多数あります。以前日本老年薬学会のシンポジウムでご一緒したことがあり、その際は薬剤性の嚥下障害についてお話しいただき、まさに目から鱗、ぜひまたと嘱望していたところ、今回は多職種に向けて認知症の方の嚥下機能低下についての概説と、そのケアについてお話しいただく機会を得ました。
食べられなくなると嚥下機能低下と考え、評価→リハという流れになりがちですが、そもそも食べるという行為全体を嚥下機能ととらえ、食べ物を認識するところから、口の中の動き、食道へと運び胃まで流し込む、この行為それぞれに分解してケアをする必要があるという前提のもと、認知症の原因となる疾患によって、その病態の生じ方に違いがあることをたいへんわかりやすく説明いただきました。
例えばアルツハイマー型認知症の方は、注意障害によって食事が進まない、レビー小体型認知症の方はまさに嚥下障害を生じやすいことに加え、食事中の血圧変化や、嗅覚低下により食事が進まないこともあるなどなど、言われてみれば!と思いあたること多々。
また嚥下機能訓練には限界があり、「訓練から支援へ」というキーワードは、とても合点のいくもので、食事を認識しやすくする工夫、食事に注意を向けやすくする環境づくり、味付けや食事の温度への対応など明日からできる支援について具体的にお話くださいました。
以下の書籍がお薦めです。
認知症患者さんの病態別食支援: 安全に最期まで食べるための道標(メディカ出版)
https://store.medica.co.jp/item/302270790

【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。