2017年8月、ボクシング名門のヨネクラジムが開所から54年での閉鎖となりました。ヨネクラジムはガッツ石松さん、他4人の世界チャンピオンを輩出した名門ジムでした。閉鎖の理由は会員の減少と後継者問題という事です。
現在は格闘ブームでもあり「RIZIN」「RIZE」「K-1」などの盛り上がりも有り次々と新しいジムなどの開設が増加しています。その為、新生ジムと老舗ジムとで練習生のパイの奪い合いが起こっています。ヨネクラジムに限らず昭和の匂いがプンプンする老舗のジムの閉鎖が相次いでいます。
さて昭和の匂いとはどんなものでしょうか?選手育成にこだわりが有って、プロボクサー、プロキックボクサーを育て世界チャンピオンを作るという事が目的のジムのようです。興行へのこだわりが強く、巨人の星のようなスパルタ教育に練習内容や道具なども昔通りで変化が無いといったイメージでしょうか。そしてコツコツと稼ぐという事よりも一攫千金という思考から抜け出せないというジムも散見されます。一方、令和のジムはどうかというと多くのジムはプロ志向よりも体力増進、エクササイズ、ダイエットが目的となっていて気軽に入れる、見た目が綺麗、女子受けする。男くささが無いといった特徴があります。
このような中で老舗のボクシングやキックボクシングのジムは減少の道を辿っています。昭和の時代は格闘といえば必ずテレビ中継があり放映権料などもありました、その時代にジム経営に着手した格闘家たちは財産を築きました。その財産が有るがゆえに継承を難しくしているという現実もあります。
さて診療所などの継承はいかがでしょうか?2020年の開業医の平均年齢は62歳だそうです。開業医の高齢化も大きな問題です。ご子息さんなど後継者が居る所ではバトンタッチが行われていますが、後継者が居ないところでは事業継承、いわゆるM&Aが行われています。新規開業に伴い事業継承する事で既存の患者やスタッフを引き継ぐというメリットがあります。
デメリットとしては建物や医療機器などの老朽化という点があります。患者さんは先生についているものです。医師が変わる事で必ずしもその医療機関に患者がとどまるとは限りません。開業医の急速な高齢化により継承したい医師は増加している一方で継承されたい医師は減少しています。自分の思った通りの理想の開業を行いたい医師にとっては継承よりも新規開業の方が理想の診療所を作る事ができます。
ジム経営者も医療機関継承者も高齢により認知症症状が有ったり、老いとの闘いや葛藤など抱えうまく継承する事ができない所も多いようです。ギリギリまで対策をしないまま、本人が亡くなり閉鎖に至るという事もあります。また何も対策をしないまま資金ショートするところもあります。まだまだ元気なうちに自分の引き際という物を具体化する事が大切かもしれません。周囲からは色々な意見があるとは思いますが、その意見が自分にとって耳障りが良くない事も多いかと思いますが、その人達を排除するのではなくうまく手伝って貰うのが良いかと思います。
先ほども書きましたが、加齢による認知症により、初期段階では被害妄想となっている事も多く、自分のクリニック(ジム)を乗っ取ろうとしている、などと周囲に話し始めるという事がおこります。本当に心配してくれる人材が離れて行く事も多いです。家族からも見放されるようなケースもあります。
いつも思いますが開業よりもクローズする事の方が数倍難しいなぁ~と
【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。