コロナに限らず熱発する患者さんが多く、往診が増えています。ここのところ119番がかからない、救急車が来ないことも起こっており、激しい夏は続きます。
みなさんのクリニックにも営業の連絡が増えているのではないでしょうか。夜間休日の往診代行業者の動きが活発です。夜間休日の対応が在宅医にとって負担であり、これらを代行する業者さんは以前よりありましたが、コロナでさらに活性化したという印象です。
さて、今回これらのサービスの導入について考えてみたいと思います。私自身はかなり悩んでいるというのが本音です。患者さんは時を選ばず体調が悪くなります。夜間や休日などのトラブルこそ患者や家族は不安を感じ、私たちを必要とする場面であること、それらが患者さんや家族にとって如何に負担かを知るからこそ、それらをできる限り減らす工夫を日常診療から行う意識が生まれることなどを経験してきたからです。在宅医が育つのは夜間休日対応をしてこそという思いもあります。これまでの患者さんとの関わりを理解しないドクターが訪問し、ストーリーが変わってしまうことへの不安も否めません。
一方で、夜間休日対応がドクターにとって身体的精神的負担が大きいのもまた事実、クリニックにとってその体制を維持することが苦しくなっている現状もあります。クリニックとしてスタッフが負担なく続けられること、ひいては事業として継続することも重要な視点です。どこで折り合いをつけるのか、現実性を見て決めなければなりません。
往診代行業者には業務範囲や料金体系及び契約スキームなど複数のパターンがあります。少なくともここ東京では過当競争に入った印象で、価格設定もここ1年でもずいぶん変化しています。もちろん多くは誠実に対応している企業ですが、一部、法律に抵触しているスキームでサービス提供をしている業者もありますので、みなさん導入する際の業者選択はどうか十分に注意し、価格だけでなくその契約形態を必ず確認してから決めてください。法律違反の場合にリスクを背負うのは利用する私たちであることをお忘れなく。

【執筆者のご紹介】
髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。
麻酔科、小児科を経て、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。
現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。