大きな医療法人でいくつもの病院を経営しているところがあります。各病院で一致団結して同じベクトルで進んでいく事が成功のカギでもあります。そんな中、院長と呼ばれるその施設の長の発言の大きさという事が判っている人、判っていない人があります。
院長になるまでの経歴が素晴らしく周囲からの期待も大きい方がいますが管理者としての実力発揮はこれからという方がいます。医療法人に限らず、老人ホームなどのチェーン会社なども同じでしょうが事業スピードが速いところでは施設長という人材が育つ前に次の施設が出来てしまうという事が良くあります。もしかすると施設長という管理職には不向きの方が任命されてしまう事もあります。そんな方々に共通する事なのですが自分の発言の重さが判っていない方があります。
院長、施設長になるまでは理想の話を評論家的に周囲に話しています。周りもなるほどと思うような事もありますが、トップになってからの発言は気を遣う事が大事です。うっかり漏らしてしまう人事の話しや、周囲との調整も無くいきなり物事を決めてしまうなど、トップとしての権限を行使するのは良いのですが、その事による周囲からのハレーションの大きさに気づけない方を良く目にします。誰かが得をすれば誰かが損をする、不公平が蔓延する事も、院長、施設長へのゴマすりや情報操作などが有るのでしょうが、検証もしないまま、それを真に受けてしまう院長や施設長が居ます。管理者としての教育がされないままトップになってしまった方の悲劇です。
何気なく発するトップの発言が曲解されたりすることもあります。人の上に立つ管理者は常に言葉を慎重に選び発言には気を付け
なければなりません。同じ発言をしたとしてもその人の立場によりその発言は重くなる事も軽くなる事もあります。また同じ人物の発言であっても重みのある言葉もあれば、軽くなってしまう事もあります。
院長や施設長という責任を負っている立場の人が無責任な発言をしてしまうと部下からの信頼はなくなります。自分の発言の重さを考えて言ったからには必ず有言実行です。やっぱり出来なかった。とか先日と今日と逆の事を言っている。いわゆる発言のブレがある人です。また部下へいい顔をしようとリップサービスをして失敗するケース、場当たり的な対応で根本的な解決ができない、こういった事が院長、施設長の言葉を軽くして行きます。こんな状況が続くと信頼は無くなり組織が崩壊していきます。発言に対して「自らやるべき事は必ず実行する」、「やるべく事もやらずに口先だけで発言する」この差が言葉の重みに大きな差となって行きます。
太ったお医者さんから、「少しやせた方が良いですよ」と言われても説得力がないですよね。自分がやせてから言ってくれ、と思うのが常です。他にも遅刻ばかりする上司から、遅刻を注意されるというケース等も全く説得力を持ちません。言葉の説得力って見た目や行動力によって受け取る印象が変わってしまうという事です。
他にも言葉の重みに違いが出るケースがあります。「自信に満ちて堂々と発言をする人」と「発言をするときにおどおどしていたり、おろおろしていたり、声が震えていたり」という人の発言も言葉の重さが全く異なってしまします。
また道理の通った、理路整然とした、エビデンスがしっかりしているという発言と稚拙な言葉、矛盾している、エビデンスが無いこんな発言も当然ながら言葉の重みも説得力も違ってきます。人からの受け売りや知ったかぶりという人の言葉はとても軽く受け止められてしまいます。
私も講演などを頼まれますが
「難しい話は簡単に」「簡単な話は面白く」「面白い話は深く」こんな話し方が良いそうですよ!!

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。