在宅医療最前線1/5往診の適正化”だけではなくコストの議論も①

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2024-01-05

 2024年診療報酬改定の議論が活発になってきました。中医協での議論の1つに往診の適正化という議論が出ています。マスコミからの発表などを見ていると不適正という論調のものが多いようですが、実際の現場では患者の医療費を安くするために往診を利用している所も多くみられました。

 現場の看護師の意見を聞くと月2回の在宅時医学総合管理料(以下在医総管)か施設入居時医学総合管理料(以下施設総管)と2回の訪問診療を算定するよりも、月1回の在医総管か施設総管と1回の訪問診療料と1回の往診で算定した方が安いという理由で往診を算定する事例が多かったと話しています。

 月2回の管理料に加え、月2回の訪問診療と1回の往診料では更に医療費が上がってしまうとの事で、患者さんの経済状況を踏まえあえて安い診療報酬を選んでいるケースが以外に多かったようです。これらが全部訪問診療料へ移行したため300万円強診療報酬が上がったとする医療機関もありました。

 例えば内科の主治医から皮膚科、形成外科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科などへの往診依頼が来た場合、主治医の内科で在医総・施医総を算定しているため、「2つ目診療所」では在医総・施医総、在宅寝たきり患者処置指導管理料も算定する事ができず材料費のコストを捻出する事が出来ない状況です。往診料が訪問診療料に変わり費用が安くなるのであれば、「2つ目診療所」も在医総・施医総、在宅寝たきり患者処置指導管理料などの算定が可能とならなければ往診へ行って逆ザヤとなってしまいます。

 実際に専門医の往診を必要とする患者は多く内科で訪問診療をしているのにもかかわらず、整形外科や精神科、眼科、皮膚科などへは家族や施設のスタッフの付き添いにより外来通院をしているケースは多いです。また外来に関しては各科複数の医療機関を受診している患者も多いです。

 地域の専門医がやっと往診を始めたこのタイミングで往診料が不適正となると専門医による往診をやめてしまう医療機関も増えるのではと危惧します。「2つ目診療所」が定期的に往診をしているケースが訪問診療になるのであれば、必要な材料費が算定できるよう新たに複数医療機関による在医総管・施設総管などの管理料を新設する事が必要かと思います。

 往診料だけを議論するのではなくそれに関わるコストについても同時にご議論頂きたいと切に願います。安易な往診の対象の厳格化は、患者の不利益につながります。主治医以外の医療機関に対する管理料(在医総管・施設総管等)の算定是非の議論をもっとすべきだと思います。



【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加
年間100本ほどの講演を行っている。

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