在宅医療最前線11/6訪問介護事業大ピンチ

中村 哲生(医療法人永生会 特別顧問)

2024-11-06

 2024年の介護報酬改定では訪問介護の報酬が下がりました。在宅医療機関としては最も協力してもらっている事業所の1つでしょう。何故訪問介護の報酬が下がったのか理解できずにいました。しかし業界的には訪問介護事業所は利益率が高かったから下がったのです。確かに医療報酬でも介護報酬でも、薬局でも歯科でも他に血液検査会社などもこれまでの改定で利益を出している事業社に対してその業界の利益率に応じて点数を下げるという手法はこれまで通りです。

 しかし介護報酬改定後、訪問介護をしていた事業所さんの倒産や事業撤退は過去最高の数字となっているようです。では何故訪問介護事業者の利益率が高かったのでしょうか?
 
 どうやらサ高住などにまとめて訪問している訪問介護事業者が効率良く収益を上げていたようです。一方で個人のお宅を1軒ずつ回る昔ながらの訪問介護の事業者は元々ギリギリの経営状態が続いていました。そのタイミングで介護報酬が下がり、更に今回はベースアップ加算のように人件費を上げなければならない状況で人件費が高騰しました。老人施設などはお給料が上がりましたが訪問介護事業者はお給料を上げるのが厳しい状況になりました。
 
 同じ介護であっても施設と訪問では施設介護の方が訪問介護よりお給料が有利に働くようになりました。その結果スタッフの確保に最も苦労していた訪問介護事業のスタッフは更なるスタッフの枯渇という状況になりました。

 介護報酬ダウンと人材の枯渇というダブルパンチにより訪問介護から撤退するところが増えてしまいました。サ高住に効率よく訪問介護する事業者が悪では有りません。元々ルールの中で活動していて、必要に応じて訪問していたのでしょうが個人宅とサ高住とでは効率が違うのです。同じ訪問介護であってもビジネスモデルが違うのです。このビジネスモデルの違う2つの訪問サービスに対して介護報酬が同額だったからこのような結果になったのでしょう。

 いずれにしましても一度改定が行われてしまいましたので2027年までこのあと3年間は介護報酬改定が有りません。その3年間個人宅を回る介護事業者は生き残る事が出来るでしょうか?少子高齢社会において働き手が減少しています。訪問系では外国人材もまだ参入できません。円安により外国人材も減りました。また他業種の人件費高騰、水道光熱費の高騰、インフレ基調、何重苦なのでしょうか?
と私の事業に影響がある訳ではありませんが、とても気になっています。

経営ギリギリの訪問介護事業所
まるで 短くなった鉛筆みたいですね。
どういう事かって?   もう削るところがありません。



【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加

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