伝統の継承とは長い歴史を通じて培われた習慣、芸術、技術や知識などを大切に次世代に引き継いでいく事です。守るべきものは保護し継承の仕組みを作ることです。
現在、医療法人の赤字割合は急増しています。そして2025年の医療機関の倒産件数は過去最高となっています。医療の崩壊とも言われ深刻な問題となっています。倒産が急増した理由は収益の悪化が原因です。収益の悪化とは物価高騰、人件費の高騰、光熱費の高騰に加え、以前から指摘されていた消費税問題が原因です。社会保険診療に関わる消費税は非課税です。それに関わる薬品や設備には消費税がかかっています。消費税導入当初の3%の時代には診療報酬にその分の上乗せがありましたが、5%、8%、10%と消費税の支払い割合が上がっても、それに見合う診療報酬体系にはなっておらず、医療機関の経営を圧迫しています。
日本の保険制度ですが1958年に国民健康保険法が施行されました。1961年に全ての国民が医療保険に加入する国民皆保険が実現したことに始まります。さらにそれ以前に1922年(大正時代)に健康保険法という法律が既に制定され世界に誇る保険制度が日本には出来上がりました。高度成長期には目覚ましい経済発展を遂げ、団塊の世代、団塊世代ジュニアと人口も増加しました。しかしながら現在は少子高齢社会において労働力人口は減少し経済も停滞しています。現在、社会保障費は日本の財政を圧迫しています。
厚生労働省は1万1千床の削減を決めました。そして2年連続の赤字を出した病院に対してベッド1床削減毎に補助金が出る事になりました。削減額は1床当たり410万円です。元々厚生労働省はこの補助金により7,000床のベッド削減を見込んでいましたが、この補助金の申し込みは全国で5万4千床にも上ったそうです。この件数は想定の7.7倍もの申し込みが来たことになります。それだけ医療機関の経営はひっ迫している状況だという事がわかります。
2040年までは老人人口が増加します。今現在でもインフルエンザやコロナなど感染症の患者が増加すればアッという間に入院が出来なくなります。公立病院の統合などにより救急搬送の時間に1時間以上もかかってしまうエリアも出現してきています。ここ20年以上、診療報酬は下がっていて、医療機関の経営努力にも限界が来ています。
先ほども書きましたが日本の保険制度は世界に誇る医療制度だと思います。総ての人が平等に医療に掛かる事が出来ます。フリーアクセスが保証されています。
皆保険の制度設計は人口が増加する事が前提で作られました。少子高齢の日本では皆保険の財源が足りなくなります。少子化問題と社会保障の財源はセットの問題です。労働人口が増えなければ、高齢者を支える事ができません。日本の政治は少子化問題についてはどうも諦めているような節もあるのが最近の状況です。人口減についても既に織り込み済みのようで、人口は減る事で日本の制度を考えるようになってきました。もっとも奇跡が起きて今年1夫婦での子供の人数が2.0人を超えてもしくは奇跡が起きて3.0になったとしても人口問題が解決するのは20年後です。
さて、日本が世界に誇る保険医療制度(国民皆保険)は今後も脈々と継承される事になるのでしょうか?
それでは今回も謎かけで終わります。
伝統とかけまして、
思いのほか症状が軽かったとときます
その心は
継承(軽症)だと良いな~
では次回また 宜しくお願いいたします。

【執筆者のご紹介】
中村 哲生(なかむら てつお)
1965年生まれ
医療法人永生会 特別顧問
多くの医療機関の顧問を歴任
開業に関するコンサルは70ヶ所以上
在宅医療に関するDVD
著書「コップの中の医療村」
2017年APECに参加